DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2010.09.20

第45号 月刊「美楽」10月号

「つまみ食い」
 
 ほんの少しお腹がすいて、誰にも見られずに、誰かに知られずに、忍ぶように、“つまみ食い”。
 丸めた親指と中指が、震えている。
 母さんの“干し柿”を、口のなかに放り込むとお腹は、まだまだ空いているけれど、なんだか、気持ちは満腹になった。

 いたずらは、小さな、小さな冒険。冒険は愉快。

 今日、陰険陰湿ないたずらが横溢してるが、人間を“つまみ食い”する子供たちに、決して、“心の満腹感”は訪れない。





2010.09.14

第44号 シンガポールの憂鬱と未来

 シンガポールは、近くて遠い街。以前の会社のご褒美旅行で3度ほど訪れたのは、セントーサ島にある海沿いのゴルフコースとグッド・ウッド・パーク・ホテルの先にあるニュートン・サーカスで食べるブラックタイガーの炙りが目的だった。

 沖縄の澄んだ青い海の横のスタジオで長期滞在して、親友の照屋リンケンさんとレコーディングして以来、なにも遠方のアジアの果てまで行くこともなく気分は解放されるし、まして故郷の鹿児島には年何回も帰京しているのだから、余程の事情でもない限り南シナ海の周辺の町を訪ねることはないと思っていた。
 そうこうしているうちに、20年程月日が跳んだ。

 今でも飛行時間は7時間。海外への移動の飛行機の中では、ほとんど酒を飲むことは無いのだが、午前発の便に飛び乗ったので夕方まで、退屈に身が持たないと思い白ワインを口にした。
 モンゴルは勿論北京よりも上海よりも、マニラよりもハワイよりも遠い。しかしその人口500万人の小さな町に、世界中の金融と情報と、人材が集っている。蒸し暑いアジア最南端のこの街は赤道の斜め下にある他の都市とは異なり”知性がのんびり昼寝”をしている。
 ラッフルズ・ホテルには、未だにへミングウェイのシガーの香りが漂っているし、アガサ・クリスティの奇妙な殺人事件のミステリアスな予感もする。

 翌朝、とにかくオーチャード・ロード(銀座の中央通りだね)を歩いてみたかったので、早起きして噴出す汗を覚悟で、街に飛び出した。椰子やバーミヤンなどの熱帯林が、横断歩道やビルの壁面に絡み、街の隅々の小さなスペースには原色の花が綺麗に植えられている。
シンガポール芸術大学や、大きな教会や、露店で売られている原色のジュースは、今でも変わらない街の雰囲気を保っている。
 
 巨大なコンベンション・ホールとホテルとカジノの上に空中公園を演出したマリナ・ベイほどの施設は日本の何処にも見当たらない。これが、今世紀を牛耳る華僑のパワーと、政党政治に終始して国際化に遅れた日本との差を象徴しているかのよう。まだまだ、未完成のこの施設は、既に観光名所として世界中からVIPを集め、プレゼンをしている。

 そう言えば、亡くなられた加藤和彦さんの、「シンガプーラ」と言う曲(歌)に触発されて、
「西、東、インド会社・・・その歴史を秘めながら」というフレーズにも強く惹かれていたように思う。
 街行く人は、若く、知的で、眼鏡をかけている人が多い。市の条例で厳しく規制されているので喫煙者は、隠されたように放置された灰皿を見つけ一服するしかない。・・・・・そう・・・・電子スモーカーは用のない街ななだ。

 今年の夏は”あの暑さ”で、極端にゴルフの回数が減った。
なのに、ラッフルズ・ホテルが運営する「ラッフルズ・カントリー・クラブ」に、顔を出した。赤道直下40度以上あるかな。
 レンタル・クラブで征服できるほど甘いコースでは無く、コースの中は、無人に切り込まれた小川と、池と、湖で、たちまち玉がなくなった。
 しかも、このクラブは、20年物の、パワービルトでメタル製。
風も無く、芝生から揮発する熱気の中で、朦朧としてプレーを終えた。

 帰り道が、ひどく、遠く感じられた。






2010.09.07

第43号 電子スモーカーいよいよ元年

 電子スモーカーに関する、国民生活センターの”抜き打ち検査”が行われ、20社あまりのメーカーがニコチン・タールの含有に関する指導を受けた。幸いに、アーススモーカーは、以前から成分や、内容や、故障に対して神経質に対応してきたので、無事にパス。

 それにしても、いよいよ煙草は400円台に突入。年間15万円の嗜好品になる。!”チリも積もれば、山になる?”・・・・どころでなく、書籍を購入したら100冊、ガソリン1000リットル(日本列島縦断可能)、吉野家の牛丼(ただ今270円)500杯、ゴルフボール300個、いやいやサラリーマンの喫煙者には厳しい値上げだ。

 そして、おそらく電子スモーカーは、150万本から200万本程度の市場に成長する。3000万人が禁煙を考え、1000万人が減煙する。

 ふと寂しいのは、指先の煙草の煙を眺めながら、物思いに耽る時間や、酒場の人間模様や、食後の満足感は何処に消えてしまうのか?
 そう思う僕が、電子スモーカーをプロデュースする自己矛盾なのである。




2010.09.05

第42号 週刊女性自身御節弁当

 週刊女性自身の田辺編集長は言ってみれば日本で一番の女性市場を把握している。オージーフーズの大野社長は日本全国の食材通で日本一の”目利き”。この二人が、日本の”食事の心”探しの旅にでる。

 果たして、”弁当”位で、日本の状況に何が起る?と言う話もあるが、実は、このスピード狂で、デジタル狂いで、何でもかんでも携帯とコンビニで用を足す軽薄な今日・・・・
ふと立ち止まって”モノを考える”機会も人間も少ない今日・・・やはりきっかけは「食」なのではないかと思う。

 しかも、グルメというほど家庭経済は豊かでもないし、一方でデフレ食に代表される日常の「食事の有り方」が問われ始めている。
 ダイエットが生き甲斐の若い女性も多い、肥満を気にする中年の女性も数知れず、最近では長寿や高齢化の食事を特集するメディアも日増しに増えている。つまり、わが国の歴史上はじめての食事ブームなのだ。

 ”目の前の料理”の知識を学ぶことで、その奥と底にある日本を考える。

・・・とすれば心機一転、年の初めの、正月の弁当に焦点を合わせ、思い切ったネーミング「母の御節」を誕生させよう。



 「母さんのお節(こころ)」・・・久し振りに”効果”の現れやすい商品の誕生であります。