DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2012.09.21

第34号 月刊「美楽」2012-10月号 

『秋の実』
 行きつけの小料理屋のテーブルにすすきが1本置いてあった。こんな時期にどこからすすきが舞い込んだのかと聞いたら、「先日、富士山の麓のうどん屋から頂戴した」とのこと。
 都会では、すすきも見られないし、赤とんぼも飛ばなくなった。季節もなくなり、自然も軽薄になり、人は体温すら原子力で管理されている。

 誰も泣かないし、誰も笑わない。





2012.09.16

第33号 浜松町の芝大神宮「例大祭・だらだら祭り」

 浜松町の名前は江戸時代に人工的に植え込まれた防砂林と、江戸湾から吹きすさぶ強い風から増上寺の表参道を行きかう人々を護るための防風林に由来する。

 芝大門から東京湾に抜ける東への道は、埋め立てられる前の砂浜の形状が今でもイメージできる。
 「芝えび」が豊富に収穫できたのだろうか?だらだらと200メートルほどの浅瀬が続いた後、突然“すり鉢”状の急な傾斜の坂道に変わり、現在の海岸通まで伸びている。

 芝大神宮の「例大祭・だらだら祭り」。どこにこの街の住人がこんなにたくさんいるのだろうか?貿易センターの前で、数十人の祭り人が老若入り混じり山車を、盛り上げている。この日ばかりは、愛宕警察の交通課も駐車違反を取り締まれない。

 今年も浜松町に秋が来る。





2012.09.10

第32号 銀座6丁目並木通りイタリア料理「トラットリア マルタ」

 銀座6丁目並木通りイタリア料理「トラットリア マルタ」に、招待された。
 この店は、ファンケルの宮島会長の行きつけのイタリア料理で、ランチもディナーも驚くほどリーズナブルで、気分よく、滑らかに、食事の時間が過ごせる。
 一般的に、銀座の西洋料理は隣の客人と肘がぶつかったり、時には会話が交錯したり、ひどい場合は、人の携帯電話に相槌を打ったりするほど、ゆとりもなければ、隙間もない。
 しかし、ここマルタは、1畳に1人ほどの広大なスペースにゆっくりと、イカの墨をあえたドライカレーが食べられる。

 壁にたくさんのうさぎの絵がかかっている。
 このうさぎの名前を「マルタくん」と呼ぶらしい。マルタ島のマルタなのか、丸太棒のマルタなのか、その辺はさておいて、このビルの関係者がこの絵の画家であるらしい。目の前でおっとりとワインを飲みながら、笑っている宮島さんとは、かれこれもう20年ほどのお付き合いになる。
 私の知っている経営者の中では、群を抜いて文化的で、上品な逸材である。