2006.07.29
第31号「桜島への祈り」
「これは・・・・」と思った新しい事業や商品が、芽を出し始めたときに、私は故郷の桜島の裏側にある垂水のお墓に出向き、先祖の力を借りにお参りに行くことにしている。
笑われるかもしれないが、この習慣はほとんど儀式に近いほど神がかっていて、早朝のフェリーに乗って錦江湾を渡り、日が出る前の桜島の空が紫色になる瞬間に、こうべを垂れるのがプロセスの一つになっている。
この朝は、今年の中でも一番華麗な色彩を演じてくれた。
新しい商品を創るまで、私の我儘やそれから生まれる人間関係の膿や、プロジェクトのメンバー全員が共有している不安や、泥まみれになった売り上げのシミュレーションやらで、グレーのヘドロになったすべての“生まれいずる悩みが、蝋燭の火が一瞬にして掻き消されるように白くなり、やがて希望の紫に変わるのである。”
今朝は、早すぎて弟の好きだった赤い花が買えないかもしれない、そう思った瞬間、僕の煙草の煙も紫色に変わった。
2006.07.18
第30号「亀田弁当記者会見」
来週から発売される亀田弁当の記者会見が行われた。今もっともテレビの視聴率を稼ぎ、新聞の部数を大きく揺るがし、殺伐とした親子が多い中で、ホットな親子リレーションの話題を提供する亀田興毅君の弁当は、最低でも100万食は売れる。
昨年の暮れから温めてきたこの企画は、世界タイトルマッチと合わせて日本全国で発売される予定。
まだ成人式にも満たない亀田君を、ややマスコミが持ち上げすぎていると懸念もあるが、いずれにしても大阪弁でずばずば本音を語る亀田君は、奥歯に挟まったようなものの言い方しかできないこの国の人たちの中にあって、突出したキャラクターである。
記者会見の一時間前に、きっちりとしたブレザーで亀田君は会場に現れた。僕よりもたくさんこの弁当企画に関するアイデアを提案し、販売先のローソンを研究し、試食会で食材をチェックし・・・・・・といった彼の仕事に対する姿勢は、ブラウン管から皆さんが感じている大胆な粗暴な若者とは全く逆の、戦略的で繊細な感性の持ち主である。
これだけ圧倒的なメディアの露出量で実態とは違う亀田像が創りえられているのが、やや心配な気がするのだが・・・・・・。