DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2005.04.28

第5号「渡さんは自転車に乗って天国に出かけた」

「小金井公会堂で追悼コンサートなんて先輩らしいですね」久しぶりに乗り込んだ中央線の窓に、30年前と同じように自分の顔を映している。
少しも変わってないなぁ?
ここ数年、思想も文化も哲学も感じない最近の僕の生活?
昔の仲間がステージで唄うのを、舞台の袖でそっと見ていた。
アンコールの曲が終わるとステージ中央に掲げてあった高田渡さんの遺影が、吊り上げられて・・・天国に昇っていった。
「やぁ久し振り・・・」てな感じで楽屋に行くのも気が引ける。
かといって、このまま帰るには、なんとなく中途半端な気分。
ファンが出て行くのを待って、舞台の最前列に飾ってある高田渡さんの写真に近づいた。
たくさんの花と日本酒の向こうに、“自分のサイズどおりに生きいく事に徹した渡さん”が在る。




2005.04.09

第4号「朝靄の桜島」

心が騒がしい毎日を繰り返していると、不意に先祖の墓参りに行きたくなる。
この日は、早起きをして、午前6時過ぎの垂水行きの船に乗った。
デッキで深呼吸をすると、体中の毛細血管が、何百年も前からの風に癒されてくる。
穏やかな湖のような錦港湾はまだ布団の中。
その時、誰かの声が聞こえたような気がした。
何十人の東家のOBたちが、桜島の麓から手を振っている。
「また帰ってきましたよ」と、僕は“逢いコンタクト”。