DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2006.11.09

第42号「名古屋の味噌煮込みうどん」

 「小さじに3分の1程、大蒜(ニンニク)を入れて食べると体が温まりますよ」
名古屋駅から乗車したタクシーの運転手が教えてくれた。
この日の東海地方は少々出番の遅れている冬が近づいてくる、という予報にも関わらず、ラコステの半袖のポロシャツでいても汗ばむほどの陽気である。

名古屋へ行くときは、山本屋の味噌煮込みうどんを楽しみにしている。食べ方は、20年前と変わらない。  
まず岡崎屋の赤味噌の匂いを嗅いで・・・茹でないで穴のない鍋蓋で密封し、ごつごつぐつぐつ煮込まれたうどん・・・その上に生卵をかける。なかなか冷めない鍋蓋を茶碗代わりに、白いご飯を少々のせ、そこにスープかけて、うどんを混ぜる。要は“赤みその猫飯うどん”。従ってうどんではなくご飯から食べるのが私の流儀である。

 
名古屋は僕の学生時代の思い出の土地でもある。この平べったい平野を訪れると、いつも決まって奇妙な安心感と、言葉に馴染めないよそ者の焦りと、久々に会う旧友との緊張感に襲われる。

僕の青い時代は“何処か甘ったるい、しかも伸びてしまったうどん“の様でもあるが、それでも過去と言う時間の鍋蓋の下で、煮詰まって、今になってもぐつぐつと沸騰しているのかも知れない。