DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2006.04.25

第20号「長嶋一茂氏との嵐のロケーション・ハンティング」

 何をやるにもすべては“現場”から始まる。よくある話だが、殺人事件などの犯人の痕跡も必ず“現場”に残っていると言うし、どんな名曲も幼少の頃に耳にした記憶に残った音階がのちに美しい楽曲の原点になると聞いたことがあるし、極端な話、この広い宇宙に地球のように水分のある惑星かどうかも小さな隕石のかけらを分析した結果発覚することもある。

 来年の公開を目指して企画中のある映画のロケハン(ロケーションハンティングとは、撮影現場の視察のことをいう)に、千葉の郵便局を訪ねた。この映画を、長嶋一茂氏とブレスト(企画を出し合いながら、脳みそに嵐を吹かせること)しているうちに、ブレストの前にロケハンをしたほうが無駄な想像力を使わなくて良いという話になったからだ。

 この映画のストーリーの舞台にもなる郵便局や、漁村や、富士山の見える海岸や、地元の小さな食堂を回っていると、天気予報の予想通り突然、嵐のような大粒の雨に襲われた。
墓参りのシーンの場面は太平洋を見下ろす岬の灯台である。小さな灯台の屋根の先端に設けられた避雷針に、空を覆った黒い雷雲の中に含まれたすべての電気が雷となって一点に集中して落雷している。こんなシーンは、とても机の上のブレストではイメージできないほどの閃光であった。


 週に何回もの役員会で、現場にでるエネルギーさえ失ってしまった会社の経営陣も、本当に会社を愛するのであればロケハンをお薦めする。

 現場に出て、お客様の顔を見る、商品の展示状態を見る、ベット上で朦朧としている患者を診る、リングサイドでファンの声援を聞く。この日本は限りなく無限大の現場が存在し、そこには永遠の創造力が溢れているはずだ。




2006.04.23

第19号「早川の漁港」

 昨夜から友人の東氏(あずま)の経営する「湯楽」(温泉旅館)に滞在している。今朝は早起きをして、車で5,6分のところにある早川の漁港を訪ねてみた。    
先ほどまで漁に出て仕事を終えたばかりの漁船から、新鮮な魚の匂いや、まだ熱を持った重油の匂いが溢れ、海から岸壁に続く階段には、たくさんの鱗が朝の太陽を受けてあるものは青く、あるものは虹色に放射している。

魚をおろす漁師たちの日焼けした筋肉の残影があちこちで声を上げている。

今年の春も世界的な異常気象のために海水の温度が上がり、本来獲れるはずの旬の魚が見当たらない。加えて、ベネズエラの強気と中近東の混沌で、原油価格が高騰しているため、漁に出ない船も出始めている。
私は寿司が好きである。とりわけ光物が大好きで、鯵、鯖、鰯の3種類が寿司屋のショーケースから、どれか1種類でも欠けると寂しくなる。
先週も銀座の寿司屋で、鯖ばかり1時間に渡り食べ続けた。今晩は、小田原駅前の友人が経営する「みどり寿司」に顔を出し、鰯と鯵を交互に食そうと思う。





2006.04.15

第18号「オーラを放つ魔裟斗氏の人生」

聖路加病院の日野原先生は、“人生とは、人間が一生に生きている時間そのものである”とおっしゃっている。

恵比寿の撮影スタジオで、この夏発売予定の写真集の追い込みをかけている写真家の清村先生を訪ねた。
天井の高いコンクリート剥き出しの空間に、撮影に使った何十着もの衣装が散らばっていて、たった今、最後のカットを取り終えたばかりの魔裟斗氏は、奥のドレッシッングルームで格闘技とは違うPRという商業的世界の緊張感から開放されて、足を組みながらやわらかい笑みを浮かべていた。

K-1という格闘技は、1ラウンド3分の戦いを、3ラウンド、つまりたったの9分で世界一の強者を決めるトーナメントである。
私たちも実は毎日の時間をどう費やすかで・・・・その蓄積で人生が決まるのであろうが、その9分という凝縮された舞台で魔裟斗氏は、人生を燃焼している。

獲物を追う狼のような獰猛な目と、獲物を食した後の満足げな優しい目との落差が、今回の写真集のテーマである。   
「僕はモデルではなくて、格闘家ですのでこんなスポットライトは苦手なんです。」と、はにかんだ魔裟斗のデリカシーをどう表現するのかは、いまだ解決できない私の課題でもある。
写真集のタイトルは「オーラ」。彼の、微笑みそのものが放つ人生のやさしさと、厳しさである。

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2006.04.14

第17号「長嶋一茂さんは、・・・・元気な人と一緒にいよう・・・・元気は“心の伝染病”」

 私は、元気な人が好きだ。元気な人と一緒に居ると、必ずこちらも元気になる。何故なら・・・・・
元気な人の仕事の特徴は、シンプルであり、スピードが速い。底抜けにオープンで裏がない、よって仕事の行く先が共有できる。だから、無駄が少ない、ストレスがない。集まる仲間も元気系・・・つまり一流である。
創造的な集団になる。
だから仕事がもっと元気になる。
“元気は人に連鎖し、ビジネスに連鎖し、きっと世の中にも連鎖する”。

長嶋一茂さんは、そんな“笑顔と元気の伝道師”である。

「今、ご先祖さんの墓参りに行ってきました。何故か、挨拶をしなきゃぁ・・・なんて気分になりまして。心が引かれたんですよ」
「ほんと、故郷っていいですね。ほっとして、疲れた心が解けちゃうみたいで、楽な気持になりますね」

長嶋名誉監督の切手をプロモートした関係で、一茂氏が郵政公社に「1日手紙大使」を依頼された。
訪れたのは長嶋家の故郷である千葉県佐倉市の佐倉郵便局と開催中の名物「チューリップ祭り」。

佐倉郵便局の壁面は、背番号3に象った切手のポスターと“歓迎・長嶋一茂さん”」の文字。駐車場でたくさんの局員さんと、地元の皆さんのお出迎え。
村上局長はじめ、隣町臼井局長の岡野さん、それに関東支社の渡辺さんのきめ細かい配慮に感謝!

郵便局員さんの業務分担表に「長嶋」さんの名前を発見!
「この方は、親戚かも知れませんねぇ。きっと遠縁かなぁ」
僕は、こんな一茂氏の発想を尊敬している。

チューリップ祭りの会場は1000人近い、一茂ファンで溢れていた。
同じタイミングで拍手が起こり、同じ顔で笑っている。同じ気持でスピーチを聞いて、視線はステージの一転集中・・・・・・・・故郷っていいなぁ。

東京から、わずか車で40分。
佐倉は、元気の出る街である。元気のいい人がたくさん居る街である。