DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2005.01.31

第1号「動き出す楽天!」

骨太で巨大なクレーンが、この春から宮城仙台野球場を賑わす楽天球団が既に勝ち誇ったかのようにその先端を空に向けている。
湿度も雲も風もない東北の青空は、昨日の豪雪が嘘のような青だ。
このまだ芽の出ない土筆のような匂いとときめきに、僕は1993年の福岡を思い出している。

「まだ工事中で危ないですから、ヘルメットを被ってください。とにかく何から何まで初めてで、野球の勝負も何もありませんよ、出来の悪い子供にピカピカの洋服ですわ」
この球団のオーナーのN氏は鈍く光る金属の円盤状の屋根を、指でさしながらにこりと笑った。

「例え優勝できなくても、阪神のように人が集まるチームが理想ですよね。来年も5位くらいでしょうが・・・」
「そんなチームが出来れば怖いものなしですね・・・それより福岡の人って“祭りが”好きだし、このドームそのものを愛してくれる空間にする方が、かえって事業的に成功しやすいのでは?」 
優勝するなんて不可能な夢だとしか思えなかった僕は、この会話から申し訳ない様に遠ざかった。

あれから10年。ダイエー・ホークスは安定した戦力で日本一を争う球団に成長し、何度も中州、天神で“うれし涙”を流し、そして昨年、まるで革命のようにあっと間に所有者が代わり、球団名も変わった。

「何から何まで0から始まるんですよね。4月の開幕に間に合わせないとなぁ・・・・」
まだ作りかけのバックネット裏のベンチで僕はぼおっと座っている。楽天の小澤氏はいつになく複雑な顔。

“胎児がこの世に産まれる瞬間”のエネルギーは、その人生で一番激烈に、強引に放射するのではないだろうか?
頑張れ、ゴールデン・イーグルス・・・・・・僕は自分を応援することをしばらく忘れていたのかもしれない。