DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2011.05.27

第16号 東京タワーの灯り

 東京タワーの灯りが弱弱しい。タワーツリーにその役割を譲る準備が始まったからなのだろうか。今の、管総理の表情にも似ている。東北震災から3ヶ月が過ぎようとしている。国民の大半が被災地の状況も、東電の現状も、ましては、国際経済の悪化も、夢遊病者のように、テレビから零れる断片に、流されながら翻弄され、徐々に無力化している。

 先日、総裁候補と噂される友人と、晩飯を食べていると、疲れたような顔をして
「東さん、力の出しどころが、解からんよ」とボヤイテイタ。

政治化主導でも、官僚主導でも、明確なのは時間軸を経済主導に即刻変え、
各務の役割分担を大胆に行えるトップが居ない。
会社組織で言うと、パーツ(技術)はしっかりしてるのに、自転車操業の状態で泥濘にはまってしまった様だ。
 その間、国際関係も日々悪化、欧州も米国も火達磨で、中国はぼちぼち調整局面、アフリカ・中東は石油情勢が混沌、・・・・・
島国日本は、震災が目潰しとなり盲目的に、放蕩を始めている。

 増上寺の徳川家の霊廟が、今年も、一般に開放されている。葬られている遺体は本道裏と、寛永寺、栃木の日光輪王寺、にある。家系図を眺めていると・・・・・・・今の政権の短命は、この町に灯りすら届かない仄かな東京タワーのようだ。




2011.05.21

第15号 上海雑感

 上海・外灘エリアには、中国全土から観光客がやってくる。川の向こうには、共産主義的資本主義の象徴とも思われる浦東の高層ビル。足元には占領下に建造された、由緒正しい建造物。それぞれの建物の上には、中国の国旗が、誇らしくなびいている。国家経済が猛然と伸びていく際に、起りうる矛盾も、エンターテインメントとして観光化する。
 日本で言うと東京の隅田川?京都の鴨川・・・・雰囲気的には大阪の淀川だろうか?

 今日一日を、懸命に生きるエネルギーは、懸命に食べて寝てを繰り返しながら、時として冷たい炎のように、未来を焼き尽くし、享楽の時間しか、残さない。それを、平然と受け入れる中国は、やはり未知の国。

月刊美楽を、この町のニホンジンに、届けたいと思う。この国の瞬間的な爆発力に負けないように、この国の、巨大な空域を持った精神に取り込まれないように。





2011.05.20

第14号 魔都上海にて

 上海へは、久し振りの旅。空港から市内へのハイウェイは、整備され、平行して話題のリニア地下鉄が、市街地へ向って時速400キロで、走っている。
相変わらずの曇天、空は湿って濁り、重たい空気が充満している。
少し近代的な建造物がところどころに散在している。上海万博で話題になった会場がチラホラ。それも昨年の熱気を忘れたかのように、寂しい存在感のままに既に過去となってしまった静寂の中に佇んでいる。

 花園飯店に着くと、ホット一息。ここは、ニホンジンの資本(血)が流れているホテルだけに、安心感がある。
 旅人は、何処かで、見慣れた光景や、吸いなれた匂いを探しては、疲れを解すのだろうか?・・・・・・久々に日本語を聞いた気がした。

 昔、ダイエーの中内会長と散歩したストリートを探しながら1時間歩いた。この町独特の、海風に混じる排気ガスを堪能しながら、浦東の見える川沿いを、歩いた。36度もあるのに、皮膚が東京のままで、気候に同化しないせいか、汗さえもこの町に遠慮して、飛び出さない。

 昔、日本人を始めとした、貪欲な資本家は、汚職を筆頭に、賄賂と賭博と、麻薬と、売春と、この町を汚染した。「魔都」上海。
 スリリングなスピードで発展?変化する町の裏通りには、そんな経済的な演劇など興味すらないような顔をした貪欲で逞しい老人たちが、「世界の方向と、風向き」占っている。




2011.05.20

第13号 月刊「美楽」13号

『輪ゴム』
 蚊の鳴くような声に耳をそばだてていると、田んぼのくすんだ風に乗って、いつもの来訪者が狙われている。幸せを運ぶ者と、幸福になりたいものはいつも罪なく、両立する。

 ツバメは数年来、巣を大きくしながら夏を楽しみやってくる。僕の人差し指が震えるのを見て、三毛の子猫が、驚いている。