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2010.06.05
第25号 桜島のストレス
桜島のストレスが、どんよりと街全体に雪のような灰を降らせていた。垂水にあるお墓の掃除を済ませて空港に向かう国道と道沿いの家は、この間に降り積もった桜島の灰で、噴火に埋もれそうな廃墟のようだ。
・・・・・何故、政治のことばかりで、地球の異変を告げる報道が、なされないのだろう。・・・・・
「しばらく、お墓に行けてないのよ。だから・・・」母が、申し訳なさそうに言った。
墓石に2センチ程にも、積もり積もった灰を洗い流しながら、先祖の家系図を指でなぞっていると、29歳の若さでマレー沖で戦死した父の兄弟の文字が浮かび上がった。幼くして無くなった弟の名前も久し振りに、読み取れる。
人はやがて灰になって、地の底で深い眠りつくが、櫻島は生きている証に灰を吹き上げる。
頂上に近い噴火口から、祖先の魂が、灰と一緒に浮かび上がり、やがてそれは、積乱の雲になって、僕の肩に、覆いかぶさってくる。
2010.05.31
第24号 月刊「美楽」6月号
『和紙人形』
ある日、蝶々が家の中に舞い込んだ。ちゃぶ台の上の和紙人形を花びらと勘違いしたのだろうか。2匹の蝶は気まずくなったように、家の中を飛び回り、やがてうつろに消えてしまった。
人も時に、さ迷いながら歩いてはいけない場所や入り込んではならない路地に迷い込む。
人生は、直線の道でもなく、曲線の道でもなく、限られた時間の中で、点と点が瞬間的に描く無数の足跡のような気がする。
しかし、振り返ると、それは、曲がりくねった線のようにも見えてくる。
私は今でも、あの蝶が無事に表に飛び出して、花畑の上を舞っているかどうか心配になることがある。
2010.05.26
第23号 戸張捷さんの築地うなぎや「丸静」
戸張捷さんから、I・PADについての電話を、頂いた。たまたま昼前の電話だったので、ふいに以前ご馳走になった築地にある「丸静」のうなぎが食べたくなった。昼前から行列になるほど”知る人ぞ知る”絶品の蒲焼である。
築地うなぎや「丸静」は、築地商店街でも老舗中の老舗。剣道7段と柔道5段の兄弟が、図太い腕で、デリケートにうなぎを焼いてくれる。メニューは「連」から「臣」ときて「王」まで、うなぎの大きさと量でお重の値段が分かれている。
晴海通りから、右折して、ちょっとした路地を入ると、早くも蒲焼の甘い香りが漂っている。うなぎは、くどくなく、決して甘すぎず、歯ごたえがやさしく、身がさくりと、舌にのる。
20年前は、2、5匹を載せた「王」を食べた。それでも足りなくてお新香とお茶で食欲を抑えた。今日は、一番小さい「連」にしようか、迷ってしまった。勢いで、食事をしていた頃が、懐かしい。
そう言えば、昨年、戸張さんと我孫子でゴルフの指導をして頂いた。あの時も、昼ご飯は、「うなぎ」を食べたのを思い出した。
2010.05.16
第22号 さぼうる(御茶ノ水・神保町)の匂い
「さぼうる(お茶の水・神保町)」で、コーヒーを飲んでいる。とにかく、神保町に行きつけの飯塚歯科があるので、久し振りに顔を出そうと思っていた。
今日は、安くて速い印刷会社があるので、パンフレットの見本が出来上がるまでの時間に、”ついに30年振り”に、足を入れた。創業(開店)50年位かな・・・店内は、以前のように鬱蒼と暗く、床は”昭和の匂いプンプン”の地べたが、浮き出している。
お茶の水は、学生の町である。日本に残された最後の活字の街である。一昔前、この町で、精神を高揚させ、思想を学び、血の美しい学生たちは、”連帯”し、日本の将来を考えた。そして、彼らが憂い、危惧したように日本は変貌した。
いつもは、ミルクティーを飲むのだが、今日はコーヒーを飲んでいる。
久し振りの「さぼうる」では、そんな気分になっていた。椅子の裏側にある
壁は、タバコの脂で焦げ茶色に変色している。
ふと、額にはみ出した小さな写真を、覗き込むと、若き日の筑紫哲也先生が
笑っている。
2010.05.06
第21号 PGAゴルフの「藤」
PGA(千葉・君津市)で、早朝から苦戦のゴルフ。このコース専属のA君は、大分出身の高校野球あがりの飛ばし屋で、僕も、必要以上に、力む力む・・・いい年をして・・・・。
「ドライバーショットは、過剰意識が筋肉や体のバランスに与える影響が大きい・・・・要は、力が入るほど、玉がばらける」
12番ホールで、玉は、大きく左に曲がり、山間の谷底にOBを打った。気分転換に一応玉を捜しに行くと、群生する「しだれ藤」が、山の腹のあちこちで、紫色の水の玉のように茂っている。藤棚に整理されてかしこまり、枝垂れる藤を、以前別のコースで見たこともあるが、やはり、藤の蔦の強さを象徴するのは、野生の藤である。
僕の玉は、大きくフック(左に曲がった)したが、野生の藤の蔦は、”左巻き”。一般に観賞用とされる藤は何故は”スライス(右巻き)である。
5月下旬まで、藤は花を咲かせるだろうが、僕の左巻きの玉も、この藤の花が閉じる頃までには、収まってくれるとありがたいが。
2010.04.28
第20号 伊集院 静氏の「ねむりねこ」とアーススモーカー
伊集院先生の「ねむりねこ」(講談社文庫)の中に、最近の禁煙ブームというか、おぞましいほどの禁煙体勢をお書きになったエッセイが在る。
「戦争や、飢餓や、・・・を乗り越えてきた人たちが、”タバコを呑む行為が”楽しみの一つであったとしたら、私はそれを認める・・・・」
確かそんな文章であった。
電子スモーカーの人気商品に育ったアーススモーカーの新作(写真の3点)が発売される。この4月からお陰さまでローソンや、日本中の有名なドラッグチェーンや、女性自身を初めとした週刊誌や、日刊ゲンダイなどのメディアとのタイアップも順調である。そして、毎回のように僕は、この広告コピーで苦戦苦闘を強いられる。
*美味しい煙でやめられる
*これは、タバコではありません
***多分、数十個のコピーは、書いたかな
鹿児島の父が、タバコを止めた。仕事をしながら、文章家でもある父の指先にはいつも、タバコの煙が香っていた。もし、タバコの煙が、無かったら、父は文章を書いていなかったような、気もする。
思うに、どうも、僕自身も、禁煙キャンペーンに、追われていたのかな。
もっと、スモーカーを応援するコピーを考えよう。
「タバコは、止めない、煙大好き」・・・・これは、意味不明かな?
場所を選ぶことで、道徳を問われるのなら、タバコだけではないはずで、人間は、いつも場所を選んで、生きているのだ。
2010.04.21
第19号 中谷彰宏先生の試読本
中谷彰弘先生から新刊が届いた。もうもうこの発刊ペースに驚いて20数年。そろそろ発行点数は1000という偉大な数字に到達秒読みなのではなかろうか?毎週毎月、続々新刊が発行される。何処の書店に行っても、まるで喫茶店のコーヒーのように、常連のメニューなのだ。
「僕は、中谷書店になるかもしれません」
そう言えば、ずっと昔に、この言葉を聞いた時にも、きっと、彼のスピードと切れ味なら、可能なことであろうと、舌を巻いた。
中谷先生の凄さは、この発刊点数だけではない。例えば、全てのファン・レターには直筆で返事を書く。年賀状の返事すら、季節遅れになる僕のズボラな性格とは、程遠い。
彼の本の様に、”判断し””動き””発想し””微笑む”。つまり、中谷先生が、自身の本の経典なのである。
何ページかに、僕の紹介もして頂いた。
”東さんは、お店のお客さまに、全員に気楽に声を掛ける”と・・・・
知らない人が、横にいると、妙に気を使うので、確かにそんな所があるかもしれない。結局は大人数が、苦手の僕のコンプレックスを、長所にご理解頂いて、頭が下がる。
*3分で幸せになる「小さな魔法」
2010.04.16
第18号 戸張 捷さんと、中村哲也先生と、美楽筆者ランチ
戸張氏は日本のゴルフ業界をプロデュース、中村哲也氏は、日本の医療界をプロデュース。ご両人は嫌がるかもしれないが、業界の”未来の絵”を描き、経済の流れを把握し、現状に適切な一手を打つのが、第一人者の責任であり、義務であり、権力とするならば、まさに日本をリードするプロデューサーである。
今日は、中華料理なんぞ啄ばみながら、両巨頭が、雑談意見交換会・・・これも美楽を発刊する者の醍醐味かな。
高齢化する日本の医療費は、30年後は70兆円を越えるとも言われる。・・・国家予算にほぼ等しい?
一方、年寄りの楽しみとしてのゴルフ人口は、600万人(プレイヤーのみ)。この二つの数字を掛け合わせると、”たのしく健康を保つ為に、クラブを持って歩く人が増えれば、予防医学の見地からも、好ましい。
ゴルフ場の横に、ゴールドエイジ(シルバーではない)ホームを造るも良し、リハビリ(精神的にも、肉体的にも)にも有用。
この二人、近々、何か、合作が期待できそうな予感がします。
2010.04.09
第17号 白鳳とチンギス・ハーンとモンゴルの至宝展
横綱白鳳は、美楽の中でも人気一番の執筆者。その関係でモンゴル航空支店長ガルダさんと、この秋「モンゴル国立音楽団」の日本公演を企画中。
今日は、取材も兼ねて江戸東京博物館の「チンギス・ハーン・・・」に。
1200年前後に活躍したこのアジアの英雄は、当時分裂していた中央アジアの部族を統一し、やがてその末裔は中国全土から、ヨーロッパの入り口のキルギス周辺までの巨大な王国へと発展する。
今から、800年前の衣装や、武器、家、食器などが陳列されているのであるが、やはり”どれも大きい”。モンゴル人は、今でも、そして昔から大きい人が、多いのかな。
僕は、白鳳がこの衣装を身に着けた想像をして、こんな連中が数百頭の馬に乗って、襲って来たら、とても敵わない・・・・などど考えていた。
*この秋、モンゴルの交響楽団が、東京でコンサートを実施します。詳しくは、美楽6月号で告知します。
2010.04.06
第16号 ヒロさんは、ニューヨーク帰りの、床屋さん
ヒロさんと言う名前は、遠くニューヨークでは,
凄腕の理容師として、その名前が輝いている。
僕は、10分100円の床屋さんでも、女性用のカットやパーマ屋さんでも、どこでもいつでも、適当に髪を切る。時間が見つけられないわけではないが、気持ちの何処かに
「男は、髪なんかに、拘るな」的な、思いがアル。
しかし、ヒロさんの所に、出かける時は、何処か気を構えて出かけるのだ。
エルトンジョンや、ハリウッドの映画スターの頭を整えてきたヒロさんの、魔術に気持ちよく、馴染むように。
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