COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.04.07

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第55号 携帯コミュニケーションの弊害 『デートDV 被害者13%,加害者12%』

 「DVを考える若者フォーラムinちば」が昨年、千葉県内の大学生881人を対象にデートDV(ドメスティックバイオレンス)の実態調査を行った。

 この調査によると、交際経験のある648人中、加害経験が79人(12%)、被害経験が86人(13%)となっている。加害の内容は「はたく」31件、「モノにあたる」21件など。性行為を迫られて嫌だといえなかった女性も74人いる(ちなみに男性は24人)。
ほとんどの被害者は2人の問題だからとか、我慢すればよいと思ったと、相談しないで泣き寝入りするケースが多い。

 一方で、内閣府が昨年行ったインターネット調査でも(10代から20代の未婚の男女対象、男性128人、女性130人)男性42%、女性25%が、いつも気を使わされ、束縛されたり強制行為を経験したと答えている。特に「別れたら死ぬ」「家に火をつける」などの脅迫は女性5%、男性4%が経験している。

 このデートDV増加の大きな要因のひとつは携帯電話ではなかろうか。
携帯電話が男女間の支配者意識を助長しているのだ。今回の内閣府の調査でも「電話に出なかったり、メールにすぐ返信しないと怒られた」というのは男性45%、女性32%が経験。さらには全体の4%の女性は専用の携帯電話を持たされていたという。

 携帯電話を通した2人の関係で何を強要されているのだろうか。服や髪形などの好みを押し付ける。感情の起伏が激しく突然怒りだす。手をつないだり腕を組んだり日常的にいつも体を触れている。これなどは携帯電話での2人の距離感と実際に出会っている時の意識の揺れを生んでいるのであろう。
バーチャルとリアルの生んでいる問題のようにも思える。つまり、携帯電話の頻度と実際に出会う頻度のギャップがDVを生むといえるのではないのだろうか。

 そういえば、一昔前は付き合っている対象者以外の異性とコミュニケーションを取るのは手紙か公衆電話くらいのもので、携帯電話は一見、コミュニケーションツールとしては便利だが、男女の関係においては複雑なシチュエーションを提供しているツールにもなるということだ。


2008年4月8日号