2008年8月25日 | 2008年9月9日
2008.09.01
日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第74号 高齢化社会対応の切り札となるか 『インドネシアから介護・看護職候補第1陣205人』
インドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づいて介護福祉士、看護師の候補者205人が来日した。受け入れ側の老人ホームや病院など環境整備の急務が叫ばれる中での、慌ただしい来日である。
これは、よく考えると黒船来航と同様に歴史的な転換点の開幕である。少子高齢化に伴い労働力不足は既に始まっている。
2015年には日本の総人口の30%以上が60歳以降を迎えるという切羽詰まった状態で、医療・福祉分野の人材不足は火を見るより明らかである。
日本国内の介護労働者は、介護保険制度が導入された2000年の約55万人から、06年には117万人と倍増している。
それでも厚生労働省は、14年には140万〜160万人の介護労働者が必要とみている。一方で、介護現場での離職率は21.6%。全産業平均を5ポイントも上回り、人手不足は慢性化し始めている。
インドネシアとしても、人口が全世界第4位の約2憶3000万人で、当然ながら失業問題が国家的問題となり、外貨(円)獲得の狙いからもEPAについては積極的である。
今回の受け入れ態勢は、日本人職員と同等の給料を保証する点と、介護職で4年、看護職で3年以内に日本の国家試験に合格すれば就労続行が可能といった点が特徴である。
しかしながら、いくつか課題も残している。ひとつはランゲージバリアー(言語の壁)。来日した大半の候補者は、これから半年間日本語を学ぶ。続いてカルチャーギャップ(文化の壁)。インドネシアの大半がイスラム教徒であって、毎日の礼拝が欠かせないほか豚肉が禁止、さらにジルバブといわれるスカーフを首に巻いた女性も多い。
現地の約10倍の給料が魅力的で、なおかつ高度な医療技術が学べ、そして食料事情も治安事情も良い日本での仕事は、彼らにとって天国の職場のようにもみえる。
しかし、介護される日本国民にとっては、国家試験の質を下げないようにし、医療現場、福祉現場でのトラブルは絶対に避けなければならない。
なぜならば我が国にとって今回のEPAは、高齢化社会対応の最大の切り札になる可能性があるからだ。
2008年9月2日号
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