COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

2008年6月30日 | 2008年7月14日

 

2008.07.07

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第67号 運転手の待遇改善を真剣に考えるべき 『タクシー強盗176件』

 横浜市で連続タクシー強盗犯の23歳の男が逮捕された。この男はひとりで9件のタクシー強盗を犯したと供述している。
先日も黒人米兵の強盗殺人事件で、残念ながら善良なタクシー運転手が殺害されたばかりだ。

 ここにきて、タクシーを対象とした強盗事件が首都圏を中心に多発。発生件数は増加の一途をたどっている。全国乗用自動車防犯協力団体連合会の調べによると、2006年の発生件数は176件で検挙率が65.2%。
タクシー事業者は運転手に防犯マニュアルを携行させる他、車内に防犯仕切り板(防犯ガラス)や緊急通報システムなどを設置して防犯対策に追われている。

 以前触れたように、日本全国のタクシー走行台数は21万9000台(04年度)、個人タクシー4万6360台(05年3月)で、小泉内閣時代の規制緩和により大幅に増加した。中にはリストラをされた若手の運転手から70歳を超える高齢者の運転手までまちまちである。

 最近は原油高の問題もあり、タクシーの走行原価が急騰している一方、乗車率の低下も著しい。
運転手の待遇は悪化の一途だ。

 タクシー業界は警察とも連携しており、犯人逮捕に一役買ったり、一般の社会人が犯罪に巻き込まれるのを未然に防ぐための警察への通報業務を担っている。それだけに、警察当局や税務当局が何らかの策を打ち出して支援していくことはできないのであろうか。
国交省はタクシー台数削減を言い出しているが、これが待遇改善につながるかは疑問だ。

 タクシードライバーの平均所得は302万円(05年・厚生労働省統計)であり、全産業の平均所得の55%。年間の労働時間は全産業平均2184時間を上回る2388時間。昨年あたりから全国各地でタクシー運賃が改定されたが、それでも厳しい労働環境。北京オリンピックを前にして、外国人も増加するだけに、観光ニッポンという側面からも、当たり前のように使っているタクシー業界をもう一度チェックする必要がある。


2008年7月8日号

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