COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.04.01

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第54号 ヒカリモノが激減! 『2006年関サバ漁獲量99トン』

 このままだと回転寿司のマグロが1皿1000円を超えてしまう、と知人の寿司屋が嘆いている。マグロだけではない。今年は大分県佐賀関で水揚げされる高級魚、関サバの漁獲も激減している。いうまでもなく、地球温暖化の影響である。

 「今のままではマグロだけでなく、サバもイワシもサンマも、このエリアでは幻の魚になってしまう」(関係者)と危ぶむ声も出始めている。

 本来、関サバの漁期は秋から春先までだが、この冬の海水温が上昇したため、関サバそのものが回遊しなくなったという。2003年度に241トンあった漁獲量は、2006年度には99トンと大激減、2007年度はさらに下回るという。

 問題なのは、魚が減れば漁師も減るということだ。折からの原油高もあって、燃料費も出ない、魚がいないのではどんな漁師も食い上げ。佐賀関の1984年の正組合員数は648人いたのだが、現在は半減して372人。平均年齢も逆に高齢化してしまい、60〜70歳が中心となった。この現象は何も大分だけにとどまらず、日本全体の漁業の問題となってくるのは必然。

 日本周辺海域の年平均海面水温は過去100年間で1.6度上昇しているが、東北沖の太平洋や北海道の釧路市沖では逆に海水温の上昇がみられないため、今年あたりはサバがよく取れているという。例えば北海道の釧路市では以前ほとんどサバの漁獲がなかったのだが、2005年は約3400トン、2006年は約1900トンを記録し、簡単にいうと大分で泳いでいたはずのサバが北海道にすみかを変えたと考えられる。

 単に関サバの漁獲量減を海面水温の上昇だけで説明するのは、まだ結論が早いとはいうものの、いずれにしても日本全体で数百あるといわれる漁場の漁獲量の減少傾向は否めない。さらに漁師の高齢化も深刻な問題である。

 私はヒカリモノが好きで、回転寿司に入るとサバ、イワシ、コハダなどを食べているが、来年再来年と年を追うにしたがって、ヒカリモノこそが海のダイヤモンドと化す、嘆かわしい日が来るに違いない。


2008年4月1日号