COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.06.02

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第62号 いっそのこと無料で提供したらどうか! 『給食費の滞納22億円』

 私の小学生時代は、ひと月2000円程度の給食費を親にもらい、給食費袋に入れて学校に届けたものである。その給食費の滞納が大きな社会問題となっている。

 文部科学省が2007年1月に発表した全国調査で、滞納があったのは給食がある小中学校の4割を超える1万3907校。
その数は児童生徒の約1%にあたる10万人近くで、総額22億円あまり。
中でも沖縄県は全国平均を大きく上回る6.3%。これは東京都の8倍、金額にして2億6000万円に上る。

 義務教育だから給食という発想そのものが、本当に正しいのかどうかという問題もある。しかし、単純にモラルの問題で片付けてしまうのはいかがなものか。例えば、万が一、給食費の滞納が生徒に漏れた場合、いじめにつながるケースも考えられる。

 また、最近の倒産急増、失業者の増大を考えると、払いたくても払えない保護者も相当数いると考えられる。

 自治体の対応はどうなっているのか。千葉県では、保護者に学校給食申込書の提出を求める仕組みを導入した。宇都宮市では、昨年から保護者に給食費支払いの確約書を求めており、保証人を書く欄もある。広島県呉市では、支払い能力があるのに払わない世帯に対して、簡易裁判所に支払い督促を申し立てることにした。

 一方、良心的な学校では督促の家庭訪問を繰り返し、さらには校長のポケットマネーなどで学校に立て替えてきたところもあるようだ。

 払えるのに払わない家庭だけでなく、給食費を払いたいのに払えない貧困な家庭もあることを考えると、もし給食制度を続行するのであれば、一切タダにしたらどうか。

 小中学生を合わせて、約1000万人の児童生徒がいるとするならば、1日あたり30億円(1食300円)、春夏、冬休みがあるから年間200日と仮定して6000億円程度に予算を文部科学省が拠出すれば、給食は全員無料で食べられるはずである。全額が無理ならば半分の補助でもいい。

 道路財源などでおたおたと国会が空転しているが、未来を担う子供たちに給食費くらい賄えない国家では、とても先進国とはいえない。思い切りの悪い文部科学省と、国の将来に目の届かない政治家たちの能力の低さが給食問題につながっている。


2008年6月3日号