DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2012.10.08

第35号 浜松町の蘇生

 浜松町の蘇生は、JR山手線の中でも最大の目玉である。
 一日に17万人の乗降客が行き交い、羽田空港も24時間化空港へと向かい、この街は、日本のどの駅よりも国際化された都市になる。

 大門から増上寺へと向かう参道と第一京浜の交差する東南の一角には、この街の住人なら誰もが知る金毘羅うどん屋がある。
 仕事を終えたサラリーマンはまずは、名物の秋田屋の目が開けられないほどのやきとりを焼く煙の中で、数本のもつの串焼きを平らげる。続いて、行きつけの居酒屋で、晩酌セットを2〜3時間ゆっくりとたしなみ、終電の確認を腕時計でチェックした後、残りの数十分で金毘羅うどんを食べにこの店の暖簾をくぐる。
 言ってみれば、この店はこの浜松町に住むサラリーマンたちの一日の最後を締めくくる“締めの店”なのだ。


 この一角に、新しいビルが建造される。名物の金毘羅うどんも三十年近い歴史を閉じることになるようだ。
 創造的破壊なのか、破壊的創造なのか、都市はいつも呼吸をしているが、それが街にとって健全なのか、不健康なのか、誰も検証しない。