COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.06.30

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第66号 法的な対策が急務 『ネット通販の苦情・相談8万6000件』

 政府がようやく動き出した。サーバー管理を行っている各社に、とりわけ青少年のアクセスに関する規制を始めようとしている。これに対して各社は言論の自由だの憲法違反だのと反論をしているようであるが、これほどネット絡みの犯罪が続く中で、セキュリティーも徹底できないで利益を優先する姿勢を、民主主義的な議論とすり替えるのは納得できない。

 国民生活センターがまとめた2007年度のインターネット関連通販の苦情も急増している。これなどは法的整備を急いで欲しい。

 商品の未着から注文品の中身をめぐる苦情や相談が相次ぎ、なんと昨年度は8万6000件。05年度、06年度のネット通販(携帯電話含む)の苦情件数はそれぞれ3万9000件前後だったのだが、1年間で倍以上になったことになる。今年に入ってもこの苦情は増加し、過去最高を上回るペースである。

 国民生活センターによると、苦情内容は「代金を支払ったのに商品が届かない」「注文したデザインやサイズと違うものが届いた」、もっとひどいものは「代金を払った後に業者が倒産した」など。さらに無料の商品紹介サイトだと思っていたら、あとで数十万円の料金を請求されたというような詐欺的なサイトもある。

 ご存知の通りネット通販は、アマゾンジャパンや楽天といった大手から地方の小売店が生鮮品を販売するなどさまざまであるが、24時間営業でどこからでも買えるという利点を生かして、そのマーケットを広げている。

 今年度に予測5兆4000億円といわれる通販市場のなかで、ネットと携帯電話の通販市場は右肩上がりを続け、3兆3000億円と見込まれている。つまり、通販市場全体の6割がネットと携帯電話ということになる。

 一番の問題点は、ネットやカタログを含む通販自体にはクーリングオフの制度が適用されないことだ。つまり、買った段階で商取引が成立してしまうのだ。経済産業省は特定商取引法改正案を提出しているようだが、個人間取引におけるこのトラブルは当分増加の一途をたどるであろう。インターネットという魔物は放置していると、もろ刃の剣を持つモンスターとなってしまうのである。


2008年7月1日号


2008.06.23

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第65号 バリエーションの広がりに期待 『アウトレットモールの売り上げ5000億円』

 原油高で一般庶民の生活が苦しくなるばかりの時代にあって、アウトレットモールがブームになっている。ブランド品を格安で販売するアウトレットモールの市場規模はどんどん膨れ上がり、2008年はいよいよ5000億円に届こうとしている。北海道から沖縄まで、全国に約30のアウトレットモールがある。仙台ではこの秋に2つのモールが開業予定で、早くも競争激化が囁かれているほどだ。

 ひと昔前はアウトレットモールというと、キズ物があったり新古品といわれるものばかりで、商品の質がイマイチだったが、最近は模様変わり。アウトレット専用商品や正規販売店で売れ行きが鈍った商品がすぐに並んだりと、商品力がグッとアップしているのだ。

 4月には三井不動産が運営する「三井アウトレットパーク入間」がオープン。初日にはなんと4万人近くの客が押し寄せた。アウトレットの本場・米国では、モール数が約300といわれている。
人口も面積も違うが、約30の日本ではまだまだ増えそうな雰囲気だ。
これまでは高速道路のインターチェンジに近い郊外型、地方型が主流だったが、今後はおそらく大都市圏のど真ん中にも出現してくるのではなかろうか。

 加えて、ネットによるセカンドユースの販売や口コミの販売や直接輸入ものの商品のディスカウント等の流通ルートを考えると、アウトレットモールは百貨店のマーケットを脅かす存在にまで発展するであろう。ブランド品だけでなくクルマや薬や輸入物の食料品、書籍など商品別にアウトレットッモールが出現すると、われわれ消費者の生活も少しは楽で楽しみになるかもしれない。アウトレットモールのバリエーション、扱い商品の多様化を期待したい。


2008年6月24日号


2008.06.16

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第64号 現代のフクロウ族が求めるサービス 『深夜営業店・週1回以上利用13.7%』

 ひと昔前は深夜族とかフクロウ族とかいって、深夜に起きている人は珍しい人種であったが、時代は様変わりである。マイボイスコムがウェブ上で行った調査(サンプル数1万4350人)によると、深夜(午後10時〜翌朝5時)に24時間営業店を週1回以上利用する人が13.7%もいた。
日本の人口に照らし合わせると、約1500万人が深夜に、週1回以上コンビニやその他の深夜営業店に出向いていることになる。

 原油高の折、水道・光熱費が軒並み上り、郊外型のレストランや一部のコンビニでは24時間営業を廃止する動きも出てきた。とはいっても、相変わらず深夜に活動している人たちにとっては、24時間営業店は必要なのであろう。

 さらにほぼ毎日、深夜営業店を利用する人が1.5%いるところをみると、ざっと200万人近い人が深夜活動派ともいえる。

 さて、深夜に利用する理由は「購入したいものがある」「仕事帰り」「外出のついで」など、通り道にある店を利用する人が多いようだ。また1割の人が答えた「なんとなく」という理由も、なんとなく分かる気がする。孤独なのかもしれない。

 深夜に閉まっていて困ったケースでは、1位が「薬局・ドラッグストア」2位が「ATM」と続く。要は薬と現金の必要に迫られるケースが圧倒的に多いということだ。

 今後、利用してみたいと思う深夜営業店とは、1位「薬局」、2位が「コンビニ」、3位が「病院」、4位が「銀行窓口・ATM」、5位が「郵便局窓口・ATM」、6位が書店、以下、銭湯、映画館、レンタルビデオなどと続く。エンタメ系の施設やアミューズメント施設への深夜ニーズがさほどない。この結果にほっとするのは、現代のフクロウ族がさほど遊興に染まっていないことであろう。

 一方で、深夜には利用しないという正統派は42.4%も存在している。
原油高や犯罪多発、人件費高騰といった現状からすると、24時間営業は見直され、最低限の必要なサービスしか残らなくなるのではないか。


2008年6月17日号


2008.06.09

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第63号 四川大地震の後遺症でさらに増える可能性 『中国のうつ病患者2600万人』

 出張で北京から戻ったばかりだが、巨大な国土の中国でも今回の四川大地震のダメージは大きい。特にオリンピックで海外のメディアが注目していることもあり、その対処には古今濤国家主席も国家的な広報という観点から頭を痛めているであろう。
 
 そんな中国でいま、注目されているのが、うつ病患者の急増だ。その数は2600万人を突破したとされているが、おそらく実数はその2倍、3倍であると推察される。

 うつ病は、中国人の考える現代病のひとつとしていわれているが、その他の現代病の中身を見てみると、痴漢やフリーター、子殺し親殺し、アル中まで、経済発展でなおざりにされた現代の人々の病気がラインアップされている。

 うつ病が原因の自殺者も急増しており、北京大学がまとめた統計によると、毎年平均28万人以上が自殺している。このうち女性が15万7000人で、男性よりも21%も多い。また、都市部より農村部の自殺率が3倍も高く、農薬を服用したりする自殺者が増えているという。

一方で、都市周辺部の自殺の原因も、ストレスとうつ病が全体の80%を占め、飛び降りなどを中心とした突発的なものが多い。

 おそらく、急速な経済発展を遂げた裏で、精神的な発展速度が物質的な発展速度に追いつかず、バランスを崩してしまうケースが多いのであろう。

 四川大地震で5000万人以上の被災者を出した中国は、日本と同様にあらためて地震国として再認識されたわけであるが、この地震が原因でさらにうつ病患者が増えることも予想される。

 私の友人の中国大使館員は、こに地震の被害は向こう30年は続くと指摘する。中でも心配されるのは地震恐怖症と、地震をトラウマとした一種の精神病だ。物質的なダメージも深刻だが、精神的なダメージの大きさも見逃してはならない。


2008年6月9日号


2008.06.02

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第62号 いっそのこと無料で提供したらどうか! 『給食費の滞納22億円』

 私の小学生時代は、ひと月2000円程度の給食費を親にもらい、給食費袋に入れて学校に届けたものである。その給食費の滞納が大きな社会問題となっている。

 文部科学省が2007年1月に発表した全国調査で、滞納があったのは給食がある小中学校の4割を超える1万3907校。
その数は児童生徒の約1%にあたる10万人近くで、総額22億円あまり。
中でも沖縄県は全国平均を大きく上回る6.3%。これは東京都の8倍、金額にして2億6000万円に上る。

 義務教育だから給食という発想そのものが、本当に正しいのかどうかという問題もある。しかし、単純にモラルの問題で片付けてしまうのはいかがなものか。例えば、万が一、給食費の滞納が生徒に漏れた場合、いじめにつながるケースも考えられる。

 また、最近の倒産急増、失業者の増大を考えると、払いたくても払えない保護者も相当数いると考えられる。

 自治体の対応はどうなっているのか。千葉県では、保護者に学校給食申込書の提出を求める仕組みを導入した。宇都宮市では、昨年から保護者に給食費支払いの確約書を求めており、保証人を書く欄もある。広島県呉市では、支払い能力があるのに払わない世帯に対して、簡易裁判所に支払い督促を申し立てることにした。

 一方、良心的な学校では督促の家庭訪問を繰り返し、さらには校長のポケットマネーなどで学校に立て替えてきたところもあるようだ。

 払えるのに払わない家庭だけでなく、給食費を払いたいのに払えない貧困な家庭もあることを考えると、もし給食制度を続行するのであれば、一切タダにしたらどうか。

 小中学生を合わせて、約1000万人の児童生徒がいるとするならば、1日あたり30億円(1食300円)、春夏、冬休みがあるから年間200日と仮定して6000億円程度に予算を文部科学省が拠出すれば、給食は全員無料で食べられるはずである。全額が無理ならば半分の補助でもいい。

 道路財源などでおたおたと国会が空転しているが、未来を担う子供たちに給食費くらい賄えない国家では、とても先進国とはいえない。思い切りの悪い文部科学省と、国の将来に目の届かない政治家たちの能力の低さが給食問題につながっている。


2008年6月3日号