COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.03.11

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第51号 首長は「宣伝部長」になった方が評価される時代 『宮崎県庁観光客1カ月3万人』

 ご存じの通り、宮崎県がすごい。いったい県知事の役割というのは何なのだろうか考えさせられる。就任2年目となった宮崎県の東国原英夫知事は八面六臂の活躍ぶりだ。

 県をひとつの会社としてたとえるならば、県知事の役割は社長であり、総務部長であり経理部長であると思う方がほとんどであろう。実際、現在の宮崎県の状況は、知事イコール広報室長、あるいは宣伝部長の役割も兼ね備えている。

 たとえば、県庁によると1日平均300人から600人だった県庁見学ツアーの参加者が1000人に達している。つまり1カ月に3万人の県庁観光客が訪れることになる。
もちろん、知事のイラストなどが入った商品は昨年の5月頃から前年比5倍の売り上げで推移し、現在に至っても、このブームは尻上がりに伸びている。

 プロ野球などのキャンプで、宮崎県の来訪者が増えたため、昼間はキャンプに行き、夜は宮崎県のお土産を買うという相乗効果型のマーケットが誕生している。さらに県の観光リゾート課によると、昨年は社会人や学生を合わせて446団体が宮崎県で春季キャンプを実施し、キャンプによる経済効果だけで125億円。もうこうなってくると、巨大な宮崎デパートの誕生である。主力商品の地鶏や東国原英夫グッズ、いわゆる“そのまんま経済効果”といわれるマーケットは日本全国に勢いを広げている。

 テレビの番組表で東国原知事の名前が出ていない日を探せないほど、毎日宮崎PRのためにテレビに出ずっぱりの日々である。

 宮崎県のPR効果はいまや九州全土に及ぼうとしていて、「ANAセールス」の九州ツアーの参加者が対前年同期比110%で推移しているし、九州圏内のホテルも土曜日、日曜日は徐々に満館になっていると聞く。

 昨年、財政破綻で有名になった夕張以外にも1000に近い市町村が、財政が窮乏し破綻寸前にあって、県知事はもちろんのこと、市長、町長、村長にいたるまで、経済部長というよりは宣伝部長という役割に徹した方が、行政の責任者として評価される時代なのかも知れない。


2008年3月11日号