COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2007.12.18

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第43号 日本の電柱3300万本『ロンドン、パリは無電柱化率100%』

 イギリスの友人からいきなり「日本の空は汚いね」と言われた。
空間に張り巡らされている電線のせいである。

 そういえば、国土交通省が推進している無電柱化はどうなっているのであろうか。海外に目を向けるとロンドン、パリは無電柱化率100%、ベルリンは99.2%、ニューヨークは72%。一方、東京23区における無電柱化率は、なんと7.3%(05年)で、欧米の主要都市と比べて大きく立ち遅れている。日本全国の市街地平均は1.9%と、電柱と電線だらけなのである。

 日本全国にある電柱の本数は、電気事業便覧によると電力会社10社合計で、約2080万本(05年3月)。さらに電力会社の他にNTTも保有している。この数は04年度末の数字で、東日本が約570万本、西日本が618万本、おおまかであるが、全国の電柱の本数は約3300万本という数字である。つまり、日本人の人口に対して4人に1人が電柱を持っていることになる。

 電柱は、公共の場所に立ているとは限らない。個人の私有地に立っている電柱は1180万本。電柱の3本に1本は、個人の敷地に立っている。電力会社は、それぞれの個人には電柱敷地料という名目で1年間に電柱1本につき1500円、支線(電線)1本につき1500円、合計3000円を3年分まとめて9000円、振り込んでいる。
 
 国土交通省は1985年度から関係事業者と連携し、電線電柱の地下空間活用(電線共同溝の整備、無線電柱化)を促しているが、04年度末には約6200キロの地下敷設を実施してきた。

 子供の頃は電柱にのぼっておふくろに怒られたり、お正月ともなれば電線に凧がひっかかったり、散歩中の犬がオシッコをひっかけるなど、懐かしい思い出のある電柱だが、都市景観という美意識の議論をするならば、わが国は後進国と言われてもしかたない。

 交通や防災の面からも問題が指摘されている。街づくりビジョン全体の見直しが急がれる。


2007年12月18日号


2007.12.11

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第42号 30代の本離れ進む『1ヵ月本を読まない人52%』

 まったく嘆かわしい数字である。読売新聞社の、読書に関する全国世論調査の結果によると、なんと、1ヵ月のうちに本を読まなかった人の数が、前回調査に比べ3ポイント増え、52%となった(10月28日掲載)。2人に1人はまったく活字に触れずに生活しているというわけである。

 年代別では高齢者ほど本離れが進んでいる。70歳以上が66%、60歳代が55%、50歳代は51%。ショッキングなのは、30歳代が44%で、前回の調査と比較すると8ポイントも増えてしまったことである(40歳代45%、20歳代43%)。

 読書人口は国家の文化を支え、道徳を支え、教育を支え、福祉を支える重要な数字ある。それなのに、この結果はどういうことか。

 本を読まなかった理由(複数回答)は、情けないことに「時間がなかった」というのが49%で、対前年比4ポイントアップと最も多く、次いで「本を読まなくても困らない」20%、「読みたい本がなかった」19%などの順となっている。

 やはりここでも、パソコンと携帯電話の影響が出ているのではなかろうか。通勤電車の中で、携帯メールを打ち、帰宅してテレビを見、就寝前にパソコンを開いていたのでは、活字に触れる時間など、持てるはずもあるまい。

 ちなみに読みたい本の分野を3つまで挙げてもらったところ、「健康・医療・福祉等」が25%でトップとなった。
これは高齢化社会市場の影響もあることながら、あわせて自分の健康を懸念する人が日本全体に増えている結果であろう。

 活字離れを起こした国家の最大の悲劇は、活字によって培われる想像力を失うことである。つまり、目の前の事象にとらわれ、一歩二歩先の予測すらつかない国民が6000万人いるということは、ある種、文明の後退をも感じさせる。

 携帯電話の通話料やパソコンの通信コストに加え、外食費、しまいには医療費も家計に重くのしかかる今、真剣に活字文化への接近を促す対策を講じなければならない。公共の図書館の開館時間を長くするとか、各企業レベルで読書を勧めるとか、それぞれがもう少し活字のありがたさを見直して欲しいものだ。


2007年12月11日号


2007.12.04

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第41号 学校相手の“クレーマー”が急増『モンスター・ペアレンツ認知59.7%』

 モンスター・ペアレンツという言葉をご存知だろうか。
幼稚園や小学校、はたまた高校から大学まで、学校に対し激しくクレームや要求、場合によっては暴力沙汰を起こす父兄のことをいう。

 キャリア・マム(マーケティング、コンサルティンブグ会社)が実施した実態調査では、調査対象者の59.7%がモンスター・ペアレンツの存在を知っていた。
さらに強烈なのは、実に30%近くがモンスター・ペアレンツが周りにいると回答したことである。

 具体的なクレーム先は34.7%が担任の教師、次いで32.2%が校長もしくは園長、15.3%が保育士、5.1%が担任以外の教師、4.2%が教育委員会に直訴、というパターンである。その内容は多岐にわたる。
通勤に間に合わないから通園バスを早く寄越せ、あるいは運動会の競技の内容の変更、教室の雰囲気に対するクレーム、テストの出題に関するクレーム、ひどいものでは給食のメニューから校則の変更まで。

 これらのモンスター・ペアレンツの特徴は自分の家庭が世界の中心であると考えているところである。私の友人のある校長は、「年々そういう親が増えている」と嘆いていた。
つまり、家庭内での教育はほっぽり投げて、気に入らないことがあると担任や学校にとどまらず、教育委員会、文部科学省にまで突撃をする。まさにモンスターなのである。

 一方で、自分の子供のことを学校に任せないで、自分で教育する親も出現している。
「いじめ問題」などの決定的な対処の方法もないなか、親が学校に対する不信感を持つという現象は、わからないではない。しかし、核家族化して、先生と親との間にサンドイッチになってしまった2000万人以上の子供たちが、モンスター・ペアレンツ以外に頼るべきものをなくしてしまったこの国の将来が危ぶまれる。


2007年12月4日号