DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2010.06.05

第25号 桜島のストレス

 桜島のストレスが、どんよりと街全体に雪のような灰を降らせていた。垂水にあるお墓の掃除を済ませて空港に向かう国道と道沿いの家は、この間に降り積もった桜島の灰で、噴火に埋もれそうな廃墟のようだ。
・・・・・何故、政治のことばかりで、地球の異変を告げる報道が、なされないのだろう。・・・・・

「しばらく、お墓に行けてないのよ。だから・・・」母が、申し訳なさそうに言った。

墓石に2センチ程にも、積もり積もった灰を洗い流しながら、先祖の家系図を指でなぞっていると、29歳の若さでマレー沖で戦死した父の兄弟の文字が浮かび上がった。幼くして無くなった弟の名前も久し振りに、読み取れる。

 人はやがて灰になって、地の底で深い眠りつくが、櫻島は生きている証に灰を吹き上げる。
 頂上に近い噴火口から、祖先の魂が、灰と一緒に浮かび上がり、やがてそれは、積乱の雲になって、僕の肩に、覆いかぶさってくる。