DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2008.11.20

【第44号 「美楽」12月号】

『零の雪』

 突然身包みを剥がされるような強い突風が吹いて、その凍てつくような北風は、地球の回転を止め、軸を凍らせ、先進国から後進国まで巻き込んで凍てつくような世界を創ってしまった。
「サブプライムショック」とカタカナで表現しているところに尚更その欺瞞性(ぎまんせい)が高くなった。これは言い換えてみれば、「不動産債権の世界な詐欺商法」。

 宇宙の果てから舞い降りてきたような、雪の結晶を手の平に受け止めて、皮膚の体温で溶けるのをじっと眺めている。指先が冷え切るのも忘れ、その美しさに見とれていると放課後のチャイムが鳴った。校舎も校庭も鉄棒も池も水飲み場も、すべてが白い綿で覆いつくされたような境目すらない。

 国境がなければ、人種もなければ、宗教もなければ、或いは貧富の差がなければと、歌った詩人ジョン・レノンの歌のように今、世界は“真っ白な零”からやり直すことが出来るのであろうか。