DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2008.08.21

第31号 月刊「美楽」9月号

『秋の空』

 要するに、異常気象なのである。地球を包む空の雲が分厚くなり、その影響で海水の温度が上り、空気中の温度も上る。ヒマラヤの雪が溶ける、北極の雪が溶ける、海流が変わる。地球の仲間たちがその種類を減らす。

 空を眺めていると、少年時代よりも白い雲の数が多くなった気がする。雨雲から落ちる水滴も、どこか生暖かくなった気がする。昔見ていた星が消えてしまった。
 雲の断片を繋ぎ合わせて動物の形にしたり、花を咲かせたり、好きな人の微笑みにしてみたり、空は大きな創造のキャンパスだ。背中に露草の湿度を感じながら、大の字になって“雲の絵合わせ”をしていると、いつの間にか眠ってしまった。気がつくと、空は赤い紫色に変わり、その上を家路に帰る無数の鳥たちが夕焼けに向かって飛んでいく。墨色に変わる山脈に太陽が落ちると、辺り一面真っ暗になって、僕も大急ぎで自転車を漕いだ。

 秋の空の変化の速さは、科学の力では抑えきれないほどのスピードで色を変える。まるで、地球の美しさが猛然と失われていく速さを象徴するように。