DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2003.05.10

5月10日(土)橘君の誕生日で久しぶりの二日酔い。珍しく後頭部に頭痛を伴って、しかもひどい睡眠不足。ロマネ畑の白ワインにやられた。

 昨晩は「並木倶楽部」に何人の蝶たちが、集まってくれただろうか?パーティの開始は午前0時、ほんの1時間が経過した辺りから僕の記憶がチグハグになってしまった。主人公の橘君は確かそれより前にご機嫌状態で酩酊していた。


 夕方、新橋の酒屋で赤、白合わせて1ダースほどのそこそこ上級のワインを仕込んだ。
「弟のように思っている男が、40歳を迎える・・・・・」などと言い訳にしながら、その頃から何故か二日酔いの予感がしていた。グレ、エム・グランデ、ピロポ、シエール、胡蝶花、ロイヤル・ガーデン、普段行きつけの店から、気の置けない仲間が集まり、カラオケの音に耳が休まる暇がなかった。


 30歳を過ぎたあたりから、数歳ほど年下の男性を見ると、決まって亡くした弟を思い浮かべる。幼少の頃の話なので、さしたる鮮明な記憶さえないのに、彼が生きていたらこれぐらいかなぁ、こんな感じかなぁ・・・などと想像してしまう。この世に生きている弟くらいの年頃の男性を見ると、いつもこの幻想にとりつかれるのだ。橘君はたくさんいる弟の中でも、一番頼りになる弟だ。


 不思議なことに、康任(やすとう)という名前の弟が、寝かされていた病院のベットの横の白い壁を覚えている。おぼろげで、遠い過去の時間の中でほんの一瞬の光景が静止している。季節は、覚えていない。
 小さな木製のベッドで、目を閉じた弟の安らかな顔が妙にピンク色で、その白い壁には何故かその頃人気のあった「七色仮面」の漫画の悪戯書きがしてあった。病魔と闘う、彼へのプレゼントに、絵の下手な兄が、両親の目を盗んで鉛筆で小さく書いたものだ。
「康任ちゃんは、遠くの国に行ったのよ。」母の話があまりにも普通で、自然に聞こえたので、僕はなおさら彼と二度と会えないことを悟った。


 久しぶりに池田知之さんと、レイクウッド・ゴルフ・倶楽部でお目にかかった。初夏の陽射しが強く、汗がだらだら流れたにもかかわらず、18ホール、プレイした後も昨夜のアルコールが出きらなかった。大きく笑うと真っ白な歯が印象的な池田さんは、20年来変わっていなかった。僕にとって、太陽のような人がいるとしたら彼そのものだ。