DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2002.10.07

10月7日(月)リクルート時代の友人と久しぶりに銀座を歩いた。いつも手ぶらの新倉社長(日本計量器)のご招待で「七面草」に集合。

 坂本健さん(ぴあの常務)、藤原和博君(教育評論)、柏木君(リクルート常務)、らとゆっくり食事をした。胴元の新倉さんは、僕の憧れの人でもある。学習院時代からゴルフの腕前もシングルなら、銀座の酒も豪快、女性論、人生論も実践的で、こうなると当たり前ながら超弩級の人脈も豊富だ。少しべらんめぇ調の語り口は、何故か安心感があり、説得力もあり、軽快なテンポの話法の中に“少しだけ秘密”のスパイスがあるだけに息を抜けない。何時間聞いていても飽きない人物なのだ。最近の悩みは、入れ歯の接着の度合いだそうで愉快なエピソードを交えて話してくれた。


 並木通りを新倉さんと我々が歩く。グレーの良い生地のスーツのポケットに、手を軽く突っ込んで歩くいつものスタイルだ。気軽で身軽で、まるで銀座を流れる風のように歩く。この人の肩の辺りにはいつも自由と仁義の風が吹いている。馴染みのママさんや黒服さんが頭を下げる。リクルート組ものんびり新倉さんの後を付いていく。


 そう言えば、最近何処の町でも手ぶらで歩く男を見かけなくなった。少なくなったのではなく滅多に居ないのだ。ポーチといわれる皮製の小さなバッグを抱えた男、強化ビニール製の肩掛けカバンを持った男、多分パソコンに加え付属の関連キットを持ち歩いてるんだろうな。鰐皮か何かの高級そうなアタッシュ・ケースをわざわざ車から持ち出して秘書に持たせる男。女性が喜びそうなお決まりのブランド製の中途半端なサイズの・・・・。


 こんなにカバンを持ち歩くようになった男を見かけ始めたのは、いつからだろう。やはり90年前後のバブルの辺りからであろうか?手帳、財布、携帯電話、名刺入れ、タバコ、・・・・。これだけであれば無理すればスーツのポケットに入るはずだ。他に読みかけの本、電卓、彼女へのプレゼント?

 友人の男の社会現象評論家のOK氏は、
 
 「男が女っぽくなったんですよ。カバンとか、ポーチとか持ってると安心するから。何かの不安から逃れるためになんとなく持ってるんですよ」
 「最初はバブル紳士のファッションだったんでしょけど、その内主体性のない男たちがそれに憧れて真似をしてる内に定着したんですよ」

 「最近の若い男の人は化粧道具も持ち歩いてるらしいから・・・・。」

 「自信喪失の象徴よ。カードだけじゃ不安なのよ。」


 新倉さんは若いころアメリカで過ごした。なんでも随分な貧乏暮らしだったらしい。そういえば、アメリカ人も胸を張って手ぶらで歩く人が、多いような気がする。日本という国家も、“成金というブランド”の大きなバッグを持って以来、すっかり自信を無くしてしまったようだ