COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.02.19

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第48号 住宅不況でダチョウが人気 『ダチョウ飼育場日本全国450ヵ所』

 行政不況ともいわれる昨今であるが、中でも建設業界の売り上げ不振は著しい。住宅建設許可がシビアになるだけではなく、認可が遅れるため全国の戸建て業者をはじめ、マンション業者まで、2年前、3年前の建設ラッシュがウソのように、大幅な売り上げ不振にあえいでいる。

 そんな中で、ダチョウを飼育する建設業者が急増中だ。全国で450ヵ所の飼育場があるという。なぜダチョウなのか。それにはいくつかの理由がある。ひとつは折からの健康ブームにあって低カロリーであること。
しかも鉄分やミネラルも牛や豚と比べて、かなり豊富。2つ目の理由は、肉がやわらかく臭みもないこと。全国チェーンの外食店やスーパーから肉の引き合いが相次いでいる。

 さらに良いことに、繁殖率も高い。ある業者は10羽のひなを入手し、せんべいや野菜をエサに今では35羽になっているという。

 ダチョウ自身の適性も大きい。気候の変化に極めて強く、極端な話、零下から夏の猛暑まで耐えられる。性格的にも寂しがり屋で、一度飼うとオリから逃げようとしないらしい。

 このダチョウブームに建設業者だけでなく、各自治体も注目し始めている。例えば山形県の朝日町は、閉校になった県立高校の跡地を県内の建設業者に無償で貸与し、地元特産のリンゴで育てたダチョウの肉を「アップル路鳥」としてPRしている。

 さらに山形県の建設会社は約3ヘクタールの敷地に「しろとりだちょう村」を建設し、週末には100人以上の来場者を迎えている。ダチョウの肉を加工したサラミやダチョウの皮の財布、ダチョウの卵を使ったアイスクリームなどアイデアも豊富だ。

 考えてみると、3年ほど前、BSEがわが国で問題になった頃、牛以外の肉を確保するために候補のひとつとしてダチョウの肉というのも議論された。今回のブームをきっかけにダチョウの肉の認知度が上がり、外食チェーンがメニューに加えたり、有名人のダチョウ肉ダイエットでも始まれば、日本人の食源のひとつとして広く普及するかもしれない。


2008年2月19日号