COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.01.22

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第45号 タスポ導入でどうなる? 『たばこ自販機56万台』

 喫煙者がどんどん追い込まれている。新幹線、タクシーなど禁煙エリアが日に日に拡大。愛煙家は肩身の狭い思いをしながら、煙モウモウの喫煙スペースで一服というありさまだ。

 そんな状況の中、今年、全国に導入されるたばこ自動販売機の成人識別カード「タスポ」をめぐる騒ぎが大きい。カードがないと自販機でたばこが買えなくなる。その一方でカードの普及が進まなければ、コンビニエンスストアなどの店頭販売のシェアが高まる可能性もある。そこで、たばこメーカーとコンビニを含めた販売店の思惑が錯綜しているのだ。

 たばこの自販機は全国に何と56万台。業界の調べでは自販機の購入シェアは66%。金額ベースで約51%を占める。もしもタスポが普及しなければ、この巨大な市場はコンビニと販売店に流れ込むことになる。童顔の大学生に「申し訳ありませんが高校生にはたばこを売れません」とか、「身分証明はありますか」など、こんな会話のやりとりで店員とトラブルが起きかねない。

 たばこメーカー各社も対応に追われている。マイルドセブンなどのパッケージ販売をする際、キャラクターものの付録を付けたり、コンビニなどの店内に専用棚を設置したり、基本的には自販機より店頭での販促に力を入れているようにみえる。

 昨年12月、タスポの申し込みが始まった宮崎、鹿児島では、カードの普及を図るべくPRイベントを開催。街頭で顔写真を無料撮影するなどの申し込み拡大に向け必死だった。

 タスポが東京をはじめ首都圏のビックマーケットで導入になるのは7月以降。マネーカードを使い慣れている若者やビジネスマンはすんなり使いこなしていくだろうが、高齢の愛煙家は戸惑うのではないか。

 ちなみに、私は愛煙家である。たばこ=不健康というシンプルな図式も分からないではないが、たばこ=文化であった昔を懐かしんだりもする。マナーも守っている。そうした喫煙者を排除するような風潮が高まることだけは避けてもらいと願っている。


2008年1月22日号