COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2007.12.11

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第42号 30代の本離れ進む『1ヵ月本を読まない人52%』

 まったく嘆かわしい数字である。読売新聞社の、読書に関する全国世論調査の結果によると、なんと、1ヵ月のうちに本を読まなかった人の数が、前回調査に比べ3ポイント増え、52%となった(10月28日掲載)。2人に1人はまったく活字に触れずに生活しているというわけである。

 年代別では高齢者ほど本離れが進んでいる。70歳以上が66%、60歳代が55%、50歳代は51%。ショッキングなのは、30歳代が44%で、前回の調査と比較すると8ポイントも増えてしまったことである(40歳代45%、20歳代43%)。

 読書人口は国家の文化を支え、道徳を支え、教育を支え、福祉を支える重要な数字ある。それなのに、この結果はどういうことか。

 本を読まなかった理由(複数回答)は、情けないことに「時間がなかった」というのが49%で、対前年比4ポイントアップと最も多く、次いで「本を読まなくても困らない」20%、「読みたい本がなかった」19%などの順となっている。

 やはりここでも、パソコンと携帯電話の影響が出ているのではなかろうか。通勤電車の中で、携帯メールを打ち、帰宅してテレビを見、就寝前にパソコンを開いていたのでは、活字に触れる時間など、持てるはずもあるまい。

 ちなみに読みたい本の分野を3つまで挙げてもらったところ、「健康・医療・福祉等」が25%でトップとなった。
これは高齢化社会市場の影響もあることながら、あわせて自分の健康を懸念する人が日本全体に増えている結果であろう。

 活字離れを起こした国家の最大の悲劇は、活字によって培われる想像力を失うことである。つまり、目の前の事象にとらわれ、一歩二歩先の予測すらつかない国民が6000万人いるということは、ある種、文明の後退をも感じさせる。

 携帯電話の通話料やパソコンの通信コストに加え、外食費、しまいには医療費も家計に重くのしかかる今、真剣に活字文化への接近を促す対策を講じなければならない。公共の図書館の開館時間を長くするとか、各企業レベルで読書を勧めるとか、それぞれがもう少し活字のありがたさを見直して欲しいものだ。


2007年12月11日号