COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2007.11.06

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第37号 音楽業界にも格差社会 『1年間の新人歌手数324人』

 カラオケの普及で、国民全体が歌手といってもいいような時代だ。しかも持ち歌が多く、100曲、200曲を歌いこなすアマチュアシンガーは、ざらであろう。

 2006年度の新人歌手のデビュー数は、再デビューの56人も含めて324人だった。歌手を採用する音楽ディレクターの採用基準やレコード会社の採用教育費や新人歌手に投資するコストなどもあり、年ごとにバラつきはあるものの、この3年間、ほぼ300人前後で推移している。

 一方で、レコード店舗の販売の売り上げは低迷。TSUTAYAやHMV、タワーレコードなど、上位10社のチェーン店の売上高合計は前年度比6.8%減となっている。

 ところが、インターネット経由で携帯電話や携帯デジタルプレーヤーなど、モバイル、PCに配信された音楽の売上高は534億円と急増。2005年に配信を始めた「iTunes」などは「iPod」との提携で利用者数を急速に伸ばしており、恐らくシングルCDの売上高を来年は逆転するだけでなく、はるかに引き離すことになるであろう。

 また、「iTunes」と契約をしているレコード会社も100社に上り、携帯電話向けの配信が全体の90%に拡大している。着うたフルなどの普及で若者のCD離れが進む。

 そんな中で新人歌手が良い作曲家と良い歌に恵まれ、デビューし、ヒット曲を出すのは至難の業。よほどの個性派でない限り、音楽史上の記憶に名前を残すことは困難である。古くから活躍したビッグネームや、大なり小なり万単位のファンクラブを持つ歌手や、偶然に恵まれ、映画やテレビコマーシャルがヒットしたりする以外に、新人歌手が業界にとどまることはほほ不可能と言ってもいい。

 音楽業界の中にもさまざまな形で格差社会が構築されつつある。


2007年11月6日号