COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2007.10.23

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第35号 洗浄トイレはどこまで進化するか 『洗浄便座普及率65.3%』

洗浄便座(トイレ)の普及がめざましい。一般家庭の洗浄便座の普及率は平成19年3月度の調査で65.3%。つまり一般世帯の2000万世帯程度は洗浄便座を取り付けていることになる。加えて、デパートやホテル、旅館、ゴルフ場に至るまで、商業用施設への普及率も一般世帯以上に早まっているという。

 洗浄水量の業界標準は10年前まで1回当たり13リットル。これは4人家族のモデルケースで、年間約2万円の水道代がかかっていた。それが最近の最新式の洗浄トイレでは、1回あたりわずか6リットルで用をたせる。洗浄水槽の進化はもちろん必要な水の量だけでなく、今後もより一層ハイテク化するのは間違いない。たとえば音楽や照明と連動し自動的にフタが開く。あるいは便座に腰掛けた瞬間に体脂肪率や体温、脈拍などを測る医療用への革新。さらには便器の材質も陶器から汚れがつきにくいアクリル樹脂への変化など。

 一方で、諸外国では相変わらず不衛生なトイレや水の出ないトイレなど、どうもトイレに関心がないようだ。これはトイレのコマーシャルが、特に欧米では難しいせいもあるのだが、それ以上に清潔好きな日本人の民族性と洗浄トイレが、ピッタリはまって市場を形成した、ということであろう。

 私などもそうであるが、洗浄トイレはかなり習慣的な要素が強く、このトイレに慣れてしまうと一般のトイレでは用がたせなくなるという人も多いし、さらに高齢者や身障者に至っては生活必需品となっている。一方で、ハイテク化が進むにつれて、洗浄ボタンやその機能を指示するボタンも複雑化しており、あやまって緊急ボタンを押したり、女性用のビデのボタンを押したり、洗浄のための水温をあやまって設定したりするケースが見受けられる。よりシンプルなボタン操作も今後の課題となってくるであろう。

 課題はあるが、この洗浄トイレ、日本が世界に誇る文化と言っていいのではないか。


2007年10月23日号