COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2007.08.13

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第28号 下半身ビジネスの膨張 『性風俗マーケット3兆円/年間売り上げ』

 事務所がわりにしているホテルで夕方から深夜にかけて、片手にポーチを持った女性が、ロビーから平然と客室に向かう。

 いわゆるデリヘルといわれるセックスの宅配便である。実はこのデリバリーヘルス、窓口数・サービス時間・平均待ち時間で平均的客数を推測した試算によると、その年間売上高は2兆4000億円(2005年)。大きな自動車メーカーの売上高にも匹敵する。

 試算を行った門倉貴史氏の「世界の<下半身>経済が儲かる理由」によると、ピンクサロンが6457億円、ファッションヘルスおよびイメージクラブが6780億円、さらにSMクラブを加えるとなんと3兆円を超えるマーケットに発展している。

 公衆電話ボックスの周辺にチラシやビラを貼り付けるという原始的な営業スタイルが大きく変化。携帯電話やウェブビジネスの拡大で、営業がはるかに効率的になった。その一方で、低単価で性風俗を楽しむマーケットが構築された。こうした環境の変化がマーケットの成長をもたらしている。

 しかし、この市場で働く女性(男性もいるだろうが)は、基本的には人と接する接客業なので、マーケットが拡大するにつれて起きるトラブルも日増しに増えているようである。

 デリバリーヘルスの繁盛店の目安は客単価の平均が2万円、客数が15人(15本)と1日あたり30万円程度。つまり7人のデリヘル嬢を雇用し、それぞれが2人ずつの営業をすると、年間売り上げが1億円を超える。そこから女性への人件費や送り迎えする車などの諸雑費を引くと、経営者の年収はラクに2000万円を越える。ネットによる顧客アドレスの獲得や同様にネットによって紹介する女性を増やしていけば、おそらく年収1億円程度の経営者はザラにいると思われる。

 もはやわが国の文部科学省の予算程度にまで発展した下半身マーケット。野放図な拡大は、国家レベルの品格を問われることになってくる。


2007年8月13日号