COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2007.05.15

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第16号 監視社会の到来 『防犯市場1兆5千億円』

 日本は「美しい国」どころか醜すぎるほどの犯罪大国となってきている。この犯罪大国にあって、防犯設備機器(防犯カメラや監視システム)等の関連市場が飛躍的に拡大している。2000年度に大台の1兆円を突破した市場は、現在1兆5000億円規模ともいわれている(日本防犯設備調べ)。

 その中で、一段と増加傾向を示しているのが防犯カメラだ。新宿・歌舞伎町では02年2月に50台の防犯カメラを利用したシステムの運用を開始。同地区の刑法犯罪認知件数は03年の2249件から、06年には1635件と抑制効果を上げている。最近では、子供を狙った悪質な犯罪が多発していることから、通学路に防犯カメラを設置するという例も珍しくない。

 防犯システムの大半は不審者の進入防止や検知、通話機能など、直接的にではなく間接的に効果をもたらす製品で占められている。
たとえば防犯カメラは監視員が24時間見張っていない限り犯罪抑止効果は望めないが、一方で犯人の特定という役割を担っている。実際、防犯カメラに記録された犯人の姿が特定されたことによって犯人逮捕に至ったケースも多々ある。
04年3月にスペインのマドリードで起きた列車爆破テロ事件も、スペイン駅構内の監視カメラから犯人が特定された。

 日本の公共機関でも導入に拍車がかかる。7月から東海道・山陽新幹線に投入される「N700系」には、安全対策強化のためすべての乗降口に防犯カメラが設置されている。

 防犯カメラ設置にはプライバシーの侵害などを理由に反対する人も少なくない。しかし、いまの日本社会は、特急電車の中の暴行、レイプを誰一人注意することもできない。もはや、防犯機器に頼らざるを得ない状況になってしまったのだろうか。

 凶悪犯罪の増加と、市民の無関心がもたらす先は監視社会の到来・・・・・。
考えただけでもゾッとする。


2007年5月15日号