COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2007.05.08

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第15号 個人授業の落とし穴と対策 『外国語教室受講者数956万人(06年)』

 イギリス人女性英語講師の痛ましい殺人事件は、いまだに解決に至っていない。この事件で一躍クローズアップされたのが外国人講師による個人レッスンだ。本物の外国語会話が見に付くからと、受講生の人気は高い。そこに落とし穴があったわけだ。

 さて、経済産業省の特定サービス動態統計によると、外国語会話教室に通う受講者の数(06年)は、なんと956万人(延べ人数)。
ちなみに売上高の合計は1364億円に達する。1人当たり数万円の授業料を払っていることになる。全講師のうち、外国人は6割以上を占めている。

 先日の女性講師が所属していたNOVAの場合、日本全国で約900校を持ち、講師を含む外国人の在籍者数は約7000人。講師の給料は大卒の場合で、月28万円程度。そこからNOVAが所有する講師用の寮代等々を差し引かれるので、決して高収入ではない。

 NOVAの講師に限った話しではないが、収入を補うために個人レッスンに走るケースは少なくないとみられている。受講生のニーズも高い。その一方で講師と受講生という関係を超えて、男女関係に発展してもおかしくない。

 グローバル化がますます進む中、英語はもちろんのこと、中国語や韓国語、ひいてはベトナム語などの習得が必要となる。外国語会話の習得を目的とした数々のビジネスモデルがこれからも展開されるであろう。
その裏側で、今回の事件のような国際問題に発展する事態も起こりうる。加害者と被害者が逆転するケースもあるだろう。

 それを前提とした対策をどう講じていくのか。教室外での個人レッスンの禁止など、種々の制度を見直して、受講生および講師の保護を行うといった対策が急務なのは言うまでもない。語学学校の認可、経営チェックなど行政レベルでの改善策も必要だろう。

 ただ、問題の本質は別にあるのではないか。やはり学校の語学教育の貧弱さだ。中高の英語教育で、日常会話ぐらいは見に付く教育システムの確立がもっとも必要だと思えてならない。


2007年5月8日号