COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2007.04.03

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第11号 就職する前に起業のススメ 『1円起業1613件』

 サラリーマンで上司に羽交い絞めにあい、部下に陰口をたたかれるよりは、ひとり気ままに好きな仕事をして食べていきたい。組織に所属する者の永遠の夢である。

 資本金1円で会社を設立できる特例ができてから、この1円起業は続々と増えた。この特例は廃止されたが、新「会社法」の成立により、1円起業は恒久化された。

 最低資本金等の規制に関する特例が施行されてから3年で設立された企業は3万6000社弱。うち1円会社は1613社。企業のリストラで現実に目覚め起業した中高年から趣味と実益を兼ねようとした主婦、ネット系で気楽にとグループで会社組織をつくった学生、既に一定の技研や研究成果を持ち合わせた大学の研究者など、その中身はまちまちである。

 私は以前会社勤めをしていた時から、後ろめたい気持ちもなく、別に会社を持っていた。なぜならば、会社の事業やビジネスモデルに属さない能力を生かす場面が多々あったからだ。

 知り合いのケースを紹介しよう。週末に高級花を育てるある企業の役員の蘭は、1本十数万円になるという。
iモードを開発し、ウーマンオブザイヤーを受賞した松永真里も、プロジェクトを離れた後に本を出版し、その印税や講演収入が、そこそこ生活の糧になったと聞いている。

 大学生諸君は就職をする際に、既に会社を起業しておいて、就職した会社と業務委託契約あるいは顧問契約という形をとった方が賢明なのではなかろうか。社員じゃなくても結構ですから、うちの会社と顧問契約を結んでください、と。

 会社の社長である以上、社会的責任はもちろんのこと、2年、3年、ひいては将来のことも考えた自己啓発や能力開発を余儀なくされる。
会社側にとっても新入社員の給料がたとえば25万円で年収300万円としたら、300万円の顧問契約を結べばいい。保険負担はなくなるし、失業保険もなくなる。
結果的に、日本全体のビジネスパワーを底上げすることになるはずだ。


2007年4月3日号