DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2011.10.18

第32号 古庄幸一氏は、人生の30%を海で過ごした

 古庄幸一氏は、わが国の海上自衛隊のトップに、いながら一流の画家でもある。美楽に10月からご執筆頂いている手前、先日も中華料理を、共に食した。温和な、ゆったりと話しぶりの中身は、わが国を取り巻く厳しい現実と直面してきた”実体的なエピソードばかりで”初耳の驚愕。
 いずれにせよ、戦後65年間平和を甘受してきた日本は、取り返しのつかない歴史的低落を迎えることに、なりそうな・・・・・悪寒。

 古庄さんから、大きな段ボール箱が届いた。ずっしりとした重荷の中身は数十冊の画帳。中には、半世紀を隔て黄ばんだ画用紙のノートから、今にも硝煙と海の香りが入り混じった大判の物もあった。
1ページずつ、ゆっくりと捲くり、捲るごとに、海から見た日本の入り江や、湾や、島や、遠くから眺めた半島のデッサンや、水彩画が描かれている。海上自衛隊の、船の中の人間模様や、滅多に見られない女性の姿がある。
 
 「波の上で、30年くらい過ごしましたよ」

 目的意識と義務感を持った職業人は、何かを掴みながら悩み、悔やみ、焦り、それでも耐えながら、それでも目的に向って仕事をする。

 僕の何グラムかの平和は、この人から与えられたものなのかもしれない。