DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2010.01.20

第3号 月刊「美楽」2月号

『そり作り』

 なんでも手に入るようで、実は何でも手に入るとは限らない。鉛筆は、シャープ・ペンシルに変わり、シャープ・ペンシルは、キーボードに変わった。早くて便利だが、丁寧に文字を書くという精神はどこにも見当たらない。

 物置から、去年の冬に使ったかんじきやそりを持ち出して、縄を絞めなおしている。白い雪が降り始め、外の温度が指先を凍らせる。指先に息を吹きかけながら、体中を走る暖かい血の流れを感じている。