DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2009.02.20

第7回 月刊「美楽」3月号

「お雛様」
 3月上旬になると、上着に何を選んで良いのか、迷う季節である。セーターを羽織るか、マフラーを巻くべきか、半ズボンか長い靴下か、毛糸の帽子を持っていくべきか・・・・。

 村のあちこちに、濃い分厚い葉っぱをまとい、まっ赤な寒椿が何週間も輝く赤を誇張する。すべての生物が黒か茶色か白であるはずのこの時期に、この輝く赤はまるで生物の心臓のようにその静脈を露出する。

 お雛様の時期になると、私はいつもあかぎれから滲み出した血液とその赤に明日の生命を感じていた。