DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2008.05.17

第21号 四川地震と北京

 中国大飯店の20階は、“豪華閣酒労”といって所謂VIP用ラウンジである。ドイツからきたビジネスマンやオリンピックの打ち合わせに来たフランス人など、中国で言う高級官僚たちが宿泊するフロアである。
 
 窓の向こうに白濁とした空が低く広がり、高層ビルが視野を塞いでいる。ビルの上のネオンサインは流暢な筆記体の漢字で、ネオンの制作費は随分とお金が掛かるだろう。ビルの外壁にかけられた垂れ幕のような広告メディアも10メートルを超える巨大なものが多く、まさに面積と派手さで勝負している。


 四川大地震から90時間が経とうとしている。テレビの画面は救援隊と被害者の情報をひっきりなしに流し、志望者が2万人を超え、行方不明者が3万人・・・それに各国の救援支援がうんぬんと・・・・。 
 ラウンジでアイスティとフルーツを食べていると、格差社会などという意味のない現象の本質にある人間の不平等を感じる。
 生まれた場所、出会う人などによって、人間の人生が左右されるとするならば、チャンスは必ずしも平等ではなく、あらかじめ与えられたチャンスをいかに有効に使うか、というだけに留まる人のほうが多いのではないだろうか。

 30数年前初めて北京を訪れて以来、確かに北京は大きな変革を遂げたし、中国も経済的成長を続けているように思うが、どこか不似合いな洋服を着せられた子供がいつの間にか大きく成長し、居心地の悪い街に戸惑っている気がする。