DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2006.10.14

第40号「笑いを文化にした巨匠」

 「日本はGNPこそ伸びてはいるものの、それに比べて庶民の給料は上がっておりません。皆さん、GNPとは義理と人情とプレゼントではありませんよ。」
 と、こんな感じで速射法のように1時間の講演を終えた木村政雄先生は走り出すように講演会の会場の裏の喫煙コーナーに、辿り着き、おいしそうにタバコを一服吸われた。
VSNの加藤役員(写真中央)はまるで「大学の授業のように為になりました」と、木村先生の2本目のタバコに火をつけた。

関西の、というより日本を代表する“お笑い芸人”の貯水池でもある吉本興業のエンジンでもあった木村先生は、思った通りの知性派の人情家であった。
一見クールで、すべて計算されつくされたような会話を構成する木村先生の頭の細胞の回転数は、おそらく現在活躍しているどのコメディアンよりもスピードに溢れているし、暖かい。こんな人が企業の広報や宣伝を担当したらおそらくその企業の社会的なバリューは、一気に何倍にもなるだろう。人事部長にしたら、顧客の心の機微を捉えるいい営業マンが育成されるだろう。

 今日の日本のコンテンツ業界を動かしているのは、まだまだ業界人の歴史的な利権や人脈のように思える。専門的な業界ゆえ、それらも解らないではないが、木村先生のような市場の求める喜怒哀楽を直感的にトレンドにできるマーケッター(生産者)は、数少ないように思える。コンテンツ商品は、喜怒哀楽の感情的商品である。一般消費財と異なり、そのニーズの住む場所は生活者の心の中にある。従って、お金の動きよりは社会全体の心の動きを敏感に捉える力が何より一番不可欠なのである。

 次に木村先生にお目にかかるときは、一杯酒でも酌み交わしながら人間の心のあり方や、今のマスコミが犯している罪や、今後わが国に必要ないわゆる正統派のコンテンツについての話を是非お聞きしたいと思っている。