DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2006.03.28

第15号「ラジャダムナン・スタジアムは、日本の国技館」

河向うのペニンシュラ・ホテルで食事を済ませた後、車とバイクと自転車の混雑をジグザグにツイストしながらルンピニー・スタジアムにムエタイの観戦に出かけた。

タイの国技でもあるムエタイは、王室系(陸軍系)のラジャダムナンという組織と、警察系のルンピニーという組織に分かれている。
いずれもランキングを持ちチャンピオンは国宝級の待遇を受けている。言ってみれば我が国の相撲と同じようなもの。・・・・・(外国人がこのムエタイの頂点に立つのは至難の業であるが)

馬券売り場のような人混みの中で、ダフ屋らしき女性からリングサイドのチケットを4000円(定価は1000円程度)で購入。中学生ぐらいの場慣れした係員の案内で席に着いた。リングでは、前座の試合を展開中、既に、肘うちで眉間を裂かれた選手が、相手の頭を抱え込み、わき腹(レバー)を膝蹴りで連打していた。賭けの胴元が、双方のリング・サイドに陣取り、攻撃に合わせて声を上げて応援する。・・・(日本でもこの応援の仕方を真似ると良いかなぁ)

どんなに、打たれても顔を歪めない。どんなに出血をしても、動揺しない。太ももが青く痣(あざ)になってもキックを続ける。この戦士たちは意識が無くなる寸前まで、相手に立ち向かう。この白熱した死闘に自らの体温を上げた数千人の観客で、会場の温度は40度近くになっている。

ムエタイの歴史は、タイの歴史を織り込んでいる。アユタヤ王朝時代、隣国ビルマ(ミャンマー)による侵略の危機の中で、素手で敵を打ちのめす為に、国家レベルで教育普及された武術。かつて、捕虜になった味方を釈放する為に、たった一人でミャンマーに殴りこんだ英雄(ランボーだね)もいたようだ。

「全身に毒を持っている」と言われるこのムエタイ。毒の抜かれた、我が国の男性にも是非お薦めしたいスポーツ。
頭の中ばかりで物事を整理することに慣れすぎてしまった若者たちよ!たまには、“痛みや”“出血”を確認しながら、自分の肉体が生きていることを感じるのも悪くないと思うのだが。
神様の創ったルールに従って・・・・・・。