DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2003.04.16

4月16日(水)教室の都合でいつも昼に定例の会議をしているY氏が、わざわざ車を走らせて10時に訪れる。(写真参照)

 おそらく昼食を取る時間もないので、芝公園のレンガ通り沿いの旧ダイエー本社のスーパーで、飲み物や、おにぎりやそばを仕込んだ。Y氏とは、かれこれ7,8年の付き合いになるのだが会うたびにいつも新鮮なのは、職業も、年齢も、生き方も、2人の性格もまるで異なるからだ。そのY氏が急に最近、僕の話に耳を合わせてくれ始めた。ひょっとして、無理をしていなければいいが?


 窓から身を乗り出して東京湾の方から品川方面に目を流すと、ホテルからプールを抜けて、増上寺に続く道を、ソメイヨシノが低層雲のように覆っている。    

 つい3,4日前まで台湾桜と河津桜が先頭を争うように、淡い未熟な早咲きの肌色を匂わしていたのだが、あっという間に今は葉桜に変わってしまった。   

 早朝に寺まで散歩したときには、朝焼けに染まる淡い花びらが頭上を被い、一面ピンク一色、わずかな隙間から見える春の青空が、まるでおどけたときに垣間見せるY氏の、一瞬の寂しさのように僕の気を引いた。


 夜に近い夕方、日比谷通りを新橋に向かって散歩していると、時折、石楠花のなんとも甘い香りと、例年のようにツツジの華やかな赤紫が、車の騒音が気になら無いくらいに一斉に開花し始めている。


 今晩は、板橋中央病院の中村先生とN氏を交えた夕食会。中村先生は、花にたとえると向日葵のような人だ。穏やかな眼が大きな顔の表情を作り、スローな声に気持ちのゆとりが滲み出ている。派手な黄色ではないが、ストレートに近い濃黄色。決して無理な説得力は試みないが、かといって人に対して消極的ではない。僕の人生の参考書になる人物だ。


 御成門の交差点の横にある公園の道は、東京タワーに向かって45度、放射して直線に伸びている。その両側に港区役所が管理する花壇が続いている。ここでも春を代表するわかりやすい花が植えられている。中でも、マーガレットの群生が素晴らしい。量と数を競い合うなら、花びらの色が多様化してしまうスミレより黄色一色のマーガレット集団にかなうパワーの持ち主はいない。まるで、何の衒いも悩みも無いように見えるのだが、それぞれが一つ一つ必死で咲いている。


 こんな明るい一心同体の組織があったら強いだろうな。“春の営業集団”としては、最強だ。