DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2003.01.22

1月22日(水)信号待ちをしていたら、突然大きな鈍い音がして一瞬、ほんの7秒ほど我を失った。高速道路の橋桁が倒れてきたか、車の下のマンホールが爆発したか・・・・と思った。

 気が付くと、買ったばかりのジャガーの窓やドアーが完全に電動ロックされ、車の中に閉じ込められてしまった。首を軽く回してみる、肩を左右に動かしてみる、恐る恐る足を腿から少しだけ上げてみる。手首をぶらぶらと揺らしてみる。幸いにも何処も現在のところは痛まない。

 窓の外に、追突してきた運転手の顔があった。左の窓の向こうから、警察官の心配そうな声が聞こえた。

「大丈夫ですか?体は大丈夫ですか」

(かなり激しい速度で追突されたな・・・・・)初めてそう思った。

 道路の中央で車が大破したようなので、とにかく車から脱出しようと思ったが、窓も扉もうんともすんとも動かない。天井を見るとタバコの煙を出そうと思ってわずかに開けていた屋根のサンルーフから朝の冷たい空気が入り込んでいた。仕方なく強引に窓をスライドさせて、芋虫のように身を乗り出し、車体から這い出して脱出。ボンネットをクッションにして道に転がった。


 我ながら、随分丈夫に生まれたものだと思った。車の後部(ボンネット部分)は完全に姿かたちを変えていた。天井はプレスされたようにひっしゃがり、尾灯は粉々に砕け散って道の上に散乱していた。それほどの事故なのに、僕は生きている。

「良かったですね。大きな車だったら死んでますよ」

(そう言われても、こちらで追突をしてくる車両を選んでる訳じゃないよ?)


 不況の影響で、リストラされまいと不眠不休、徹夜で仕事をする人が増えている。道路の上では居眠り運転の運転手が増えている。気が焦っているのか一時停止をしないばかりか、信号すら気にしない無法者が普段でもやたら目に付く。携帯電話でメールを打ちながら川に落ちた車もいたそうだ。
経済にゆとりがないせいで、社会がギクシャクし、軽はずみな犯罪が急増している。
 知識はあるが知恵のない人間が、個人的な要求が受け入れられないからと人を傷つける。取り締まる方も、一番当てになるのは警察犬ぐらいのもので、取るに足らない犯罪は、時間が無駄だとばかりに相手にしない。


 しばらくの間、車を運転するのが怖いばかりか、道を歩くのでさえ危険な様な気がする。