COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.08.25

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第73号 水が日本人のライフスタイルを変化させる  『ミネラルウォーター・国内生産1500億円、輸入400億円』

 日本は昔から水の豊かな国であった。ヨーロッパのように上下水道を完備しなくとも、井戸さえ掘れば米も炊けたし洗濯もできた。しかし、現在、水道水で満足している人は全体のほぼ半数。特に飲料水においては、水道水をそのまま飲んでいる人は全体の4割に満たない37.5%である。それ以外の人はというと、浄水器設置(32%)、水道水沸騰(27.7%)など、なんらかの工夫をしている。

 されに注目すべきは、ミネラルウォーターをはじめとした水の購入者が全体の3割近くに及んでいることである。ミネラルウォーター類の国内生産高は2007年度で約1500億円。1990年に146億円だったものが10倍以上になっている。さらに輸入の推移を見てみると90年にわずか16億円しかなかったものが、現在では400億円近い輸入額となっている。

 このミネラルウォーター、まだまだ歴史は浅い。70年代前半に業務用市場で販売されたのが初めてで、その後、自然健康ブームに加え、海外旅行などの増加でミネラルウォーターに接する機会が増えたことで輸入量が急増した。

 さらに最近の水質汚染問題、食品偽装問題に加え、マンションの貯水タンクの汚れなどで、国内生産および輸入も含めたミネラルウォーター市場が、今後1兆円市場に向けて成長していくことは間違いない。

 さて、輸入ミネラルウォーターの動きを見てみると、なんとその7割近くがフランスである。続いて、アメリカ、イタリア、カナダという順。

 爆発的な人口増加や地球環境の変化で、今後、世界的な水不足は恒常的な問題となり、海水を淡水化したり、排水や下水を再利用したりするなどの、いわゆる水処理プロジェクトは、日本の将来の命運を左右するといっても間違いない。

 高度経済成長によって日本人のライフスタイルはいまだに大量生産、大量消費の枠から変化できないでいるが、江戸時代のようにムダのない合理的な経済生活を送るだけの知識と知恵は、今の日本人に残っているのだろうか。
水が日本人の生活を強制的に変化させるカギとなるかも知れない。


2008年8月26日号


2008.08.18

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第72号 48年間で5分の1に減少してしまった  『日本の農業就業人口299万人』

 江戸時代には士農工商と、武士に次ぐ身分を保障されていた農民。それが、いつしか農業就業人口は299万人(農林水産省)と、ピーク時の1454万人(1960年)から48年の間に、およそ5分の1に減少した。

 全就業人口6451万人(総務省統計局)の4.6%にしか過ぎない。
しかも、農業就業人口に占める65歳以上の高齢者の割合が60%であり、このまま放置していると農業就業人口は確実に200万人を切る。わが国の職業問題を基本に考えるよりむしろ、産業別労働力のゆがみ、ひずみともいえるのが現状である。

 この数字を追いかけていくと、大まかな計算ではあるが、現在の食料自給率(カロリーベース)40%は、10年後に確実に30%を切る。

 さらに日本の人口は、今後、大幅に減少すると推定されているので、2012年に200万人を切ると予測される農業就業人口は、20年には150万人を割り込む可能性がある。マスコミがどんなに騒ごうが食料の自給率は減少の一途をたどり、われわれの家計の食料に占める割合、つまりエンゲル係数は近未来的には50%を超えることも起こり得る。

 私の故郷、鹿児島県を例にとると、農業人口は8万8000人。県の人口が157万人なので農業人口率は5%。このなかで他の業種と見合うだけの収入を得ているのは、わずか3800人。つまり4.3%の人しか農業単独で生計を立てるのは不可能な状態となっている。

 根本的には若者の意識レベルを変革し、特に小中学生に危機感を持ってもらうための農業教育を迅速に開始し、労働人口比率の側面から打開策を講じなければ、前途は真っ暗といっても過言ではない。

 アメリカの食料自給率120%、フランスの100%をはじめ、先進国は圧倒的に食料供給が安定している。どこかの総理大臣が、先進国首脳会議で最重要課題と意気込んでいた環境問題。結局、満足な成果を挙げられなかった。

 日本にとって必要なのは途上国首脳会議に参加し、安定した食料の供給を踏まえながら、農業人口増の強力なカリキュラムを作ること。明日からでも対応しなければならない。まさに崖っぷちである。


2008年8月19日号


2008.08.11

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第71号 メダル獲得と経済の関係  『日本の金メダル114個』

 いよいよ北京オリンピックが始まった。開催国・中国と日本のメダル獲得数に関心が集まるが、それだけではない。五輪でのメダル獲得数は国家の経済状態を反映するといわれるだけに、躍進著しいアジア各国と景気失速のアメリカの対比にも注目したい。

 現在、オリンピックは28競技、302種目である。ちなみに日本は、前回のアテネ大会で久しぶりに16個という、東京オリンピック以来の金メダルを獲得した。今回は、米国の金メダルの数を中国が上回るようなことになるのであろう。

 日本は1912年からオリンピックに参加しているが、今までに獲得したメダルの総数(夏季)は何個なのだろう。その答えは金が114個、銀が106個、銅が115個、つまり、延べで335人しかメダリストが誕生していないことになる。

 ちなみに、20年のベルギー(アントワープ)大会での、テニスの熊谷一弥と柏尾誠一郎が初の日本人メダリストである。
日本に初の金メダルをもたらしたのは28年アムステルダム大会、三段跳びの織田幹雄と200メートル平泳ぎの鶴田義行であり、水泳王国ニッポンの伝統はこの後、ロサンゼルス大会、ベルリン大会と引き継がれる。

 バブルが崩壊した直後の92年、バルセロナ大会では金がわずかに3個、次のアトランタ大会でも3個と、やはり国の経済状態とメダル数は何らかの相関関係があるといってもいいのではなかろうか。となると今年の北京オリンピックと次回のロンドン大会は、現在の資源高、原油高、さらにサブプライムショックを考えると、せいぜい1ケタ。それも幼少期から指導教育を徹底して行われる柔道、レスリングをはじめとした個人競技にしか期待が持てないかもしれない。

 2016年には東京に誘致するという話があるが、高齢化社会の真っただ中に突入する時代に1964年並みのメダル数は悲しいかな不可能だろう。
五輪景気で国を活性化させるというのも長期的な視点においては、暴挙と思えて仕方がない。


2008年8月12日号


2008.08.04

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第70号 日本人の4人に1人がかかっている・・・  『水虫罹患率24.7%』

 驚くなかれ、日本人の約2800万人は水虫である。日本臨床皮膚科医会が大規模な水虫調査を実施、3万4730人に同意を得てフットチェックを行った結果、何らかの水虫が認められた人が8589人いた。

 その内容は足の水虫(足白癬)が5115人、爪の水虫(爪白癬)が1068人、併発が2406人だった。つまり、これを大ざっぱに罹患率に直すと、4人に1人(24.7%)となる。国民全体で単純に計算すると約2800万人が水虫ということになる。

 年齢別にみると足の水虫は30代から70代に多く、男性は50代がピーク、女性は60代がピーク。70代になると足の水虫、爪の水虫が併発するケースが多くなるという。

 基本的にこの水虫はカビの一種(白癬菌)によって生じるわけであるが、なんと土や犬、猫、牛などにも寄生している。日本人が靴を履くようになって通気性が悪くなったことや、靴下の材質によっては撥汗性が低かったり、雑菌が増えたりということが見受けられるようで、今後とも足の皮膚疾患の患者は減る傾向にない。特に梅雨時から夏にかけてがもっとも危険だ。プールやはやりのエステティックサロンなども絶好の感染経路となる。
従って、まめに足を洗い、感染に気がついたらすぐに外用薬を塗布することが必要だ。

しかし、かゆみや湿疹が出るまでに一定の潜伏期間があるのがクセもの。その潜伏期間中に他の指に感染していたり、左右の足に感染したり、家族に感染させていたりするのが、この病の恐ろしさである。
放置して黄色ブドウ球菌に感染するとリンパ管炎を起こす場合もあり、足が腫れて歩行も困難になるという。
糖尿病を患っていたりすると足を切断する例もあるというから侮れない。

 これほど水虫患者が多いとなると、日本の会社も労働者の疾患対策として、職場でのサンダル履きを励行するなど、真剣に対策に取り組むべきときではないだろうか。


2008年8月5日号