COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.04.28

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第58号 四半世紀前に比べ6倍に急増した背景 『国際結婚4万4701組』

 少子高齢化で、一説によると50年先は日本の人口は1億人を切るといわれている。GDPを維持するためにはそれなりの人口(マーケット)が必要である。

 国際結婚というと、いまでも驚きの目で見られるが、2006年度の厚生労働省の調査によると、結婚総数73万組のうち、4万4701組が国際結婚だった。7200組しかなかった1980年と比べ、四半世紀でなんと約6倍に急増しているのだ。
 
 夫が日本人の場合、結婚相手の出身国籍はフィリピン1万2150組、中国が1万2100組、韓国・朝鮮6041組、タイ1676組、ブラジル285組、アメリカ215組、ペルー115組、イギリス79組、その他が3300組となっている。圧倒的にアジア諸国が多い。

 一方で、妻が日本人の場合は、相手方の男性の国籍は韓国・朝鮮が2325組、アメリカ1474組、中国1084組・・・・となっている。

 さて、この国際結婚急増の背景にはいくつかの理由があると思われる。
かつては結婚適齢期の女性人口が男性人口を上回っていたので、女性は男性に求めた条件が甘かった。ところが、バブル以降、3高などといって、女性の求める配偶者への条件がシビアになったことや、女性の経済的条件が豊かになったことで、女性の晩婚化が進んだ。
つまらない男と結婚するよりは一人暮らしの方がハイソなどというわけだ。で、結婚したくてもできない男たちがアジア女性と知り合い、結婚にいたるケースが相当あるのではないか。

 地方の男性にとっては、嫁探しが大変なこともある。東北などで農業を営む独身の男性にとっては、嫁不足が深刻な問題になっている。こうした地域では、農協や自治体を中心に中国やフィリピンなどのお見合いツアーを実施。これが一定の成果をあげたせいかもしれない。

 つまり、相手の人柄や相性などが気に入って恋愛結婚になるケースも少なくはないが、この国際結婚の背景にはどうも社会的要因、経済的要因が反映しているように思われる。これからもこの傾向は続くのだろうか。


2008年4月29日号


2008.04.22

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第57号 ネット社会の弊害 『一億総中傷国家・人権被害42%』

 私たちは生まれ持った永久の権利として、基本的人権というものを持っている。これは憲法で保障されている権利で、内閣府による「人権擁護に関する世論調査」で、この権利の存在を「知っている」と答えた者の割合が77.8%。知らない人が22.2%もいるというのは、いかがなものであろうか。

 一般的に、この基本的人権を侵されることを人権侵害と呼ぶが、この数年、特にインターネット等々の普及で人権を侵害される人が急増している。昨年6月から7月に全国の20歳以上の男女3000人を対象にした調査の結果、複数回答であるが、「あらぬ噂や他人からの陰口」を書かれたり言われた人が、全体の42%と過去最高となった。それ以外にも、「名誉・信用の棄損、侮辱」等も全体の20%で、前回の調査から8ポイントも上昇している。

 さらに加えてプライバシーの侵害やらイジメにもつながる悪口・陰口を入れると、実は身を守るために立派に裁判を起こしてもよいと思われる犯罪が急増している。しかもパソコンの掲示板や携帯電話など、急激に普及した商品であるために全国日本列島都市規模別にみると大きな差異はなく、しかも性別でみても年齢別でみても、ほぼ全般的にフラットにこの被害者は増えている。

 昔は新聞やテレビなどで「人権問題」とか「人権が侵害された」というニュースが報道されることがたびたびあったが、この数年、えん罪や障害者問題などを除いては次第に少なくなってきたとさえ思われる。
この国の特徴でもあろうが、「そのうちなくなる」とか「しょうがない」とか、「こちらにも非がある」とか、つまり、泣き寝入りをしている人が無数にいるのではなかろうか。特に悪口・陰口の類に関しては笑って見過ごせばいいという、妙に寛大な方々もいると思うが、これを野放しにしておくと子供のイジメの問題もなくならないし、一億総中傷国家が出来上がってしまう。

 約半数の人が「人権を侵害される事件が多くなってきた」と答えた原因を作っているインターネット関連の各社は、政府の規制が始まる前に、自主的にセーフティーネットを構築してほしい。


2008年4月22日号


2008.04.14

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第56号 喫煙者減少し、税収大幅アップ 『たばこ1箱1000円時代到来』

 またもや愛煙家にとって酷な話ではあるが、どうやら、たばこは数年後に「1箱1000円」時代を超えそうな気配になってきた。そんな状況になると、まず若者がたばこを買えなくなる。高齢者も同様だ。

 日本学術会議のシュミレーションでは、現在1箱当たり189円のたばこ税を300円引き上げた場合、喫煙者は約300万人減り、3300万人強になる。たばこの消費量も2700億本から1910億本に。

 一方で、税収は大幅にアップする。年間2.24兆円(2005年)が4.29兆円になる。2兆円を超す税収増が見込める計算である。

 京都大学大学院経済学研究科が昨年発表した喫煙に関するアンケート調査では、もしたばこの値段が1000円になった場合、9割以上が禁煙をするという結果もある。
J−CASTニュースによると「本数は減ると思うが、たぶん大事に吸う」「1000円になって禁煙した、というのは貧乏くさくてカッコ悪いから、なる前にやめる」「最初は減ると思うが、すぐに元に戻ると思う。しかし、もったいないから根っこまで吸ってしまい、健康を害するのではないか」など意見はまちまち。

 世界に目を向けてみると、ほとんどの先進国でたばこの価格は日本の2倍から3倍である。例えば、ニューヨークでは1箱あたり約800円。イギリスでは1100円、フランスでは850円、ドイツでは710円、イタリア、スイスではちょっと安くて520〜560円。いずれにしても大変な高額商品となっている。

 日本国家としては税収は大幅に増えるし、国民の健康も保護できるという観点からすぐにでもたばこの値上げをしたいところではあろうが、政治家にもいろいろと都合があろうかと思う。

 ちなみに私も喫煙者であるが、さすがに1箱1000円になると月3万円から5万円、なんと年間50万円程度の出費になる。こうなってくるとたばこを吸うか海外旅行に2回行くかという選択になるので、結論としては・・・・・・パイプに替えるかもしれない。


2008年4月15日号


2008.04.07

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第55号 携帯コミュニケーションの弊害 『デートDV 被害者13%,加害者12%』

 「DVを考える若者フォーラムinちば」が昨年、千葉県内の大学生881人を対象にデートDV(ドメスティックバイオレンス)の実態調査を行った。

 この調査によると、交際経験のある648人中、加害経験が79人(12%)、被害経験が86人(13%)となっている。加害の内容は「はたく」31件、「モノにあたる」21件など。性行為を迫られて嫌だといえなかった女性も74人いる(ちなみに男性は24人)。
ほとんどの被害者は2人の問題だからとか、我慢すればよいと思ったと、相談しないで泣き寝入りするケースが多い。

 一方で、内閣府が昨年行ったインターネット調査でも(10代から20代の未婚の男女対象、男性128人、女性130人)男性42%、女性25%が、いつも気を使わされ、束縛されたり強制行為を経験したと答えている。特に「別れたら死ぬ」「家に火をつける」などの脅迫は女性5%、男性4%が経験している。

 このデートDV増加の大きな要因のひとつは携帯電話ではなかろうか。
携帯電話が男女間の支配者意識を助長しているのだ。今回の内閣府の調査でも「電話に出なかったり、メールにすぐ返信しないと怒られた」というのは男性45%、女性32%が経験。さらには全体の4%の女性は専用の携帯電話を持たされていたという。

 携帯電話を通した2人の関係で何を強要されているのだろうか。服や髪形などの好みを押し付ける。感情の起伏が激しく突然怒りだす。手をつないだり腕を組んだり日常的にいつも体を触れている。これなどは携帯電話での2人の距離感と実際に出会っている時の意識の揺れを生んでいるのであろう。
バーチャルとリアルの生んでいる問題のようにも思える。つまり、携帯電話の頻度と実際に出会う頻度のギャップがDVを生むといえるのではないのだろうか。

 そういえば、一昔前は付き合っている対象者以外の異性とコミュニケーションを取るのは手紙か公衆電話くらいのもので、携帯電話は一見、コミュニケーションツールとしては便利だが、男女の関係においては複雑なシチュエーションを提供しているツールにもなるということだ。


2008年4月8日号


2008.04.01

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第54号 ヒカリモノが激減! 『2006年関サバ漁獲量99トン』

 このままだと回転寿司のマグロが1皿1000円を超えてしまう、と知人の寿司屋が嘆いている。マグロだけではない。今年は大分県佐賀関で水揚げされる高級魚、関サバの漁獲も激減している。いうまでもなく、地球温暖化の影響である。

 「今のままではマグロだけでなく、サバもイワシもサンマも、このエリアでは幻の魚になってしまう」(関係者)と危ぶむ声も出始めている。

 本来、関サバの漁期は秋から春先までだが、この冬の海水温が上昇したため、関サバそのものが回遊しなくなったという。2003年度に241トンあった漁獲量は、2006年度には99トンと大激減、2007年度はさらに下回るという。

 問題なのは、魚が減れば漁師も減るということだ。折からの原油高もあって、燃料費も出ない、魚がいないのではどんな漁師も食い上げ。佐賀関の1984年の正組合員数は648人いたのだが、現在は半減して372人。平均年齢も逆に高齢化してしまい、60〜70歳が中心となった。この現象は何も大分だけにとどまらず、日本全体の漁業の問題となってくるのは必然。

 日本周辺海域の年平均海面水温は過去100年間で1.6度上昇しているが、東北沖の太平洋や北海道の釧路市沖では逆に海水温の上昇がみられないため、今年あたりはサバがよく取れているという。例えば北海道の釧路市では以前ほとんどサバの漁獲がなかったのだが、2005年は約3400トン、2006年は約1900トンを記録し、簡単にいうと大分で泳いでいたはずのサバが北海道にすみかを変えたと考えられる。

 単に関サバの漁獲量減を海面水温の上昇だけで説明するのは、まだ結論が早いとはいうものの、いずれにしても日本全体で数百あるといわれる漁場の漁獲量の減少傾向は否めない。さらに漁師の高齢化も深刻な問題である。

 私はヒカリモノが好きで、回転寿司に入るとサバ、イワシ、コハダなどを食べているが、来年再来年と年を追うにしたがって、ヒカリモノこそが海のダイヤモンドと化す、嘆かわしい日が来るに違いない。


2008年4月1日号