COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2007.11.27

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第40号 山村留学のススメ『参加の小中学生806人』

 ゴキブリとクワガタの区別がつかない。桜と梅の違いが分からない。海水は浮力があって体が浮くことを知らない。流れ星を見たことがない。

 挙句は、餃子を植物だと思っている、など主に大都市の小中学生の自然離れ現象は年々激しくなる一方だ。

 わが子を自然とともにたくましく育てたい、自立心を育てたい父兄にオススメなのが、山村留学である。2006年度の山村留学参加者の数は小中学生合わせて806人。
小学生552人、中学生284人だった。現在山村留学を受け入れているのは全国で27都道府県。小学校127校、中学校56校である。

 長野県のアルプスのふもと、旧八坂村は山村留学発祥の地である。今年で32年目になるこの制度は、財団法人「育てる会」が実施し、この村にある山村留学センターで子供たちは集団生活をしている。またある生徒は2〜6人に分かれて農家に泊まる。

 このセンターから5キロほど歩くと留学先の八坂中学校に着く。そこは全校生徒42人の中学校。4分の1程度は山村留学生が占めている。部活動は吹奏楽とバドミントンの2つだけ。ほとんど地元中学校生と区別のない生活を送る。山村留学の基本は1年間だが、翌年も継続するケースが圧倒的に多い。受験期になると親元に帰り受験勉強に集中するパターンだ。

 ちなみにこの山村留学の費用は月々8万円。一見、高いようだが、子供たちが商業化された街に無防備に放出され、ゲームやファッションや添加物だらけのファーストフードにお小遣いを支出することを考えれば、はるかに経済効果があるのではなかろうか。

 私のビジネスパートナーの、キョードー東京の嵐田会長のご子息は、この山村留学で鋼のような精神と肉体を備えた子供に育てられた。

 通勤電車で疲れ、携帯電話で耳鳴りを起こし、上司と部下の間でサンドイッチのようになってしまっているあなたも、少しでもエネルギーが残っているうちに、ホンの3週間、休みをとって大人の「山村留学」を実行してみてはいかがだろう。


2007年11月27日号


2007.11.20

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第39号 2年連続減少「焼酎ブーム」の行方 『焼酎市場3326億円』

 帝国データバンクによると、2006年の焼酎メーカー上位50社の売上高合計は、3325億7800万円となり、対前年比1.4%減となった。2年連続で前年割れである。上位50社のうち、九州・沖縄地区の企業は前年と同じく43社。このうち増収企業は前年の35社から9社減って26社となった。

 売上高トップは、麦焼酎「いいちこ」を擁する三和酒類、2位は「博多の華」「鍛高譚」を擁するオエノングループ、3位は「白波」を擁する薩摩酒造だった。

 最近の焼酎市場を引っ張っているのは、芋、麦、そば。県別のメーカー数を見ても分かる。1位が芋焼酎を主力とする鹿児島県勢。2位は麦焼酎を主力とする大分県勢、3位は芋・そば焼酎主力の宮崎県勢という順番になっているのだ。

 ご存知の通り、04年にピークを迎えた焼酎ブームは、2年連続で前年実績を割ったものの、03年以降、いまだに清酒の出荷量を上回り、消費者に定着したことは間違いない。当時は健康ブームをベースに焼酎ブームをつくったが、マーケットが急激に拡大したこともあり、原料の芋不足のため出荷量を制限した。昨今では、耕作面積の拡大などで芋不足については解消されたもよう。

 一方で、原材料価格の上昇と海洋投棄禁止による搾りかすの処理費用の増加で、値上げの動きも出てきている。価格に敏感な消費者の今後の動向が注目されるところだ。

 それだけに、今後は首都圏や関西圏、東北地方、北海道エリアへのマーケテイング戦略が安定成長のカギになる。加えて、韓国、中国、ベトナムなどへのアジアマーケットへの目を向ける必要も出てくるだろう。

 鹿児島出身の私が利用する鹿児島空港のみやげ物売り場には焼酎がズラリと並ぶ。そのラベルがこの3年間で4倍にも5倍にもなっているように思える。マーケットが一気に拡大して経営者が傲慢になると、ブランド戦略を怠って商品構成が複雑になり過ぎるケースがある。身を引き締めて、むしろ主力商品を強化することが今後の安定成長のカギとなるはずだ。


2007年11月20日号


2007.11.13

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第38号 中国文化の浸透 『中国語教育市場37億5000万円』

 2008年の北京オリンピック開催を控え、日本国内で中国語学習ブームが再燃している。日本の語学教育の市場規模は、2006年度に対前年比5億円マイナスの8126億円。このうち、なんと99%以上が英語。市場の2位は中国語の37億5000万円だった。全体の市場規模が微減の中で、中国語のみ増加。おそらく2010年には、50億円を突破するだろう。

 授業に中国語を取り入れた私立校や幼稚園も増えている。さいたま市の淑徳与野中学校は、3年前の開校時から課外授業の一環として中国語を必須科目に指定した。

 高知県の明徳義塾中学校・高等学校は、小学生を対象に外国語暗唱大会を行ったが、その中で10人以上の小学生が中国語の課題で応募した。高知市内には中国語を授業に取り入れている公立の小中学校があり、日本の中では最もすすんで中国語を取り入れているといえよう。

 一時、アメリカ・コンプレックスからか、子弟をアメリカンスクールに入れバイリンガルに育て、ひいてはアメリカの大学に進学させるという風潮があった。最近は、中華学校に入学を希望する日本人が増えている。東京・千代田区にある東京中華学校にも、日本人の入学希望者が集まり大人気。小学校から高校まで全体280人のうち、なんと約3分の2が日本国籍である。

 言語習得は、ただ単にランゲージ・バリアを取り除くだけでなく、言葉に合わせて文化や習慣も身に付く点で重要である。健全な形の国際化は社会に広がりをもたらす。その意味では、若者層への中国文化の浸透は結構なこと。

 ただ、その一方で日本文化を積極的に広める努力も必要だろう。日本の教育機関は、学費だけでなく生活費等も面倒をみて、日本語を学ぶ各国の学生を積極的に招いたらどうか。


2007年11月13日号


2007.11.06

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第37号 音楽業界にも格差社会 『1年間の新人歌手数324人』

 カラオケの普及で、国民全体が歌手といってもいいような時代だ。しかも持ち歌が多く、100曲、200曲を歌いこなすアマチュアシンガーは、ざらであろう。

 2006年度の新人歌手のデビュー数は、再デビューの56人も含めて324人だった。歌手を採用する音楽ディレクターの採用基準やレコード会社の採用教育費や新人歌手に投資するコストなどもあり、年ごとにバラつきはあるものの、この3年間、ほぼ300人前後で推移している。

 一方で、レコード店舗の販売の売り上げは低迷。TSUTAYAやHMV、タワーレコードなど、上位10社のチェーン店の売上高合計は前年度比6.8%減となっている。

 ところが、インターネット経由で携帯電話や携帯デジタルプレーヤーなど、モバイル、PCに配信された音楽の売上高は534億円と急増。2005年に配信を始めた「iTunes」などは「iPod」との提携で利用者数を急速に伸ばしており、恐らくシングルCDの売上高を来年は逆転するだけでなく、はるかに引き離すことになるであろう。

 また、「iTunes」と契約をしているレコード会社も100社に上り、携帯電話向けの配信が全体の90%に拡大している。着うたフルなどの普及で若者のCD離れが進む。

 そんな中で新人歌手が良い作曲家と良い歌に恵まれ、デビューし、ヒット曲を出すのは至難の業。よほどの個性派でない限り、音楽史上の記憶に名前を残すことは困難である。古くから活躍したビッグネームや、大なり小なり万単位のファンクラブを持つ歌手や、偶然に恵まれ、映画やテレビコマーシャルがヒットしたりする以外に、新人歌手が業界にとどまることはほほ不可能と言ってもいい。

 音楽業界の中にもさまざまな形で格差社会が構築されつつある。


2007年11月6日号