COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2007.07.31

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第26号 避雷針も万全ではない 『落雷被害600億円超/年』

 一見遠いようで、実は身近にある危険で忘れがちなのが、落雷による被害である。消防庁によると、落雷による火災は過去3年で705件。
気象庁が調査した落雷による施設破壊などの直接被害額は推計で年間600億円を超すという。

 ゴルフ場でプレーヤーを直撃する雷、「誘導雷」としてIT化が進んだビルの中の機器を壊し、すべてのシステムに損傷を加えるもの、電車の運休など被害の種類は数限りない。気象庁によると、落雷が年間で最も多い6、7月は1日で数万回発生している。

 警察庁の調べでは、05年度、雷で死亡した人は6人。だが、発生件数は最近になって劇的に増えている。01年度から04年度にかけての落雷事故発生件数は64件、84件、35件、99件と2ケタだったが、05年度は、なんと661件と大幅に増えているのだ。

 地球環境の異変が原因で、大気が不安定になり、われわれの常識の範囲内の予測をはるかに超えた数字となったのである。

 対策も心もとない。日本では、建築基準法で、高さ20メートルを超える建物には、避雷針の設置が義務付けられている。大半の都市住民は「避雷針があるから大丈夫」と思っているだろうが、これとて万全ではない。避雷針に落ちた雷がすべて吸収されず、周辺に飛散する「2次落雷」の被害が指摘されているのだ。

 この2次落雷対策や、ビル内のIT機器を破壊する誘導雷対策など、手をつけるべき課題は多い。

 地震、雷、火事、親父・・・・。このうちパワーが衰えたのは親父だけである。雲の核兵器ともいうべき雷の被害をいかに防ぐか。
効果的な対策が望まれる。


2007年7月31日号


2007.07.24

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第25号 社会的損失の拡大を防げ! 『携帯電話リサイクル回収台数662万台』

 2006年度の携帯電話の販売実績は4726万台(ガートナージャパン調べ)。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクをはじめ、通信各社は色、デザイン、機能はもちろんのこと、最近ではシルバー携帯やキッズ携帯まで買い替え需要マーケットの拡大に必死である。

 一方で、携帯電話機のリサイクルの実績は年々低下しているのが実情だ。ちなみに2006年度の回収台数は本体662万台、電池が347万台。00年度の回収台数1360万台と比べ、回収台数が激減している。

 この携帯電話のリサイクルを阻んでいるいちばんの原因は、「電話帳として残しておきたい」、あるいは「思い出のコレクション」などのデータ保存だ。

 第2位の理由は個人情報の漏洩問題である。ネプロジャパン及びネプロアイティの調べによると、リサイクルをしないと答えた人のうち、男性の38%、女性の62%が、携帯からの情報漏洩を意識している。

 メール機能やカメラ機能の充実、さらには動画等々の搭載により、個人情報の蓄積は飛躍的に増加している。当然、これを守ろうとする意識が強くなれば、回収率の低下に拍車がかかるのは歴然だ。

 写真などはSDカードなどの記録媒体に保存して、本体の物は削除すればいい。電話番号、メールアドレスなどの個人データは、買い替え時に新しい携帯にデータを移し、本体内のデータはすべて削除する。
「それでも個人情報の流出がご心配のお客さまには、携帯本体を粉砕するサービスもあります」(大手携帯会社)

 利用客のちょっとした意識改革で、リサイクル率を高めることは可能なのだ。
4700万台中4000万台が机の中にしまい込まれ、天然資源の回収が遅れることの社会的損失を考えるべきだろう。


2007年7月24号


2007.07.10

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第24号 最大のエイズ危機 『HIV感染者・AIDS患者数1358人』

 1358人。この数字は、2006年1年間に報告されたHIV感染者とエイズ患者の合計数である。患者数が406人、HIV感染者数が952人で、ともに過去最高となってしまった。
患者・HIV感染者数は、95年の464人から10年余でなんと3倍に激増している。とくに04年からは患者・感染者数が1000人を超える深刻な状況が続く。マスコミが騒がなくなって久しいが、日本は今、最大のAIDS危機を迎えているのだ。

 急増の原因はさまざまあろうが、「感染防止のカギであるコンドーム着用率に問題がある」(ある専門家)との指摘が出ている。

 見逃せないのは、成人向けサイトやビデオ・DVDにおいて、コンドームを使用する場面がほとんどないことだ。その手の業者がより刺激性を高めるために、より若者を取り込むためにコンドームなしの無防備な状態での映像を垂れ流しにしている。

 エイズ動向委員会の調査によると、感染経路は約87%が性的接触によるもの。そのうちの6割強は同性間での性的な接触である。異性間では若い世代に感染者が多いのが特徴。コンドームなしのセックスに走る若者が多いからではないか。

 そんな現状を改善しようと、コンドーム関係の啓蒙イベントもあちらこちらで開催されている。しかし、コンドームの消費量は年を追うごとに減り続けているのが現状だ。厚生労働省の調査によると95年に約5億9000万個だったコンドームの国内出荷数は、05年には約3億5200万にまで減っている。10年間で4割もの大幅減少だ。

 ニューヨークではこの春から市ブランドのコンドームが登場し、バーやレストラン、医療施設、学校などで無料配布されているという。性病やエイズ予防の対策のひとつだ。

 前出の専門家は、「HIV感染者はある一定の数字になると等差級数的に拡大していく」と警鐘を鳴らす。いま、食い止めないと取り返しのつかないことになる。行政の責任は重大だ。


2007年7月10日号


2007.07.03

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第23号 ブログ大国の虚実 『日本語ブログ37%/7200万件』

 日本は世界でも名だたるブログ大国だ。

 世界中に存在するブログの総数は7200万件を超え(米テクノラティ社調べ)、来年には1億件を超える勢いである。そのうちの37%が日本語(日本人)で占められ、英語のブログの36%を上回り、世界1位となっているのだ。

 ネットの影響で活字離れが指摘されて久しいが、若者たちの間に文字に親しむ現象が起きている。それも絵文字、顔文字などネット社会ならではの独自文化が広がっている。

 コミュニケーションツールとしてのブログは、旧来の媒体を凌駕しつつある。たとえば、普通の感覚であれば、「愛する」という言葉をメールの活字で打つよりは、手書きの手紙で送ったり、日記にしたためたほうが、その思いは遥かに深く伝わるし、残ると思う。が、今はコミュニケーションが軽薄化しているせいか、ブロガーが愛用する「IT活字」が主流だ。

 ブログをめぐっては、さまざまな事件も起きている。掲載した内容に反発する連中が非難、中傷の類のメールを集中的にに送りつけ、機能停止や閉鎖に追い込む「炎上」が後を絶たない。ネット社会特有の歪んだ現象だ。ブログは、個人が事由に表現できる場であるとともに、集中砲火のリスクが付きまとう場でもあるのだ。

 その一方で、個人情報保護法がとやかく言われる時代にあって、自らの情報を写メールや絵日記で公開するという神経には、どうにも納得できないものがあるのも事実だ。政治家やタレント、文化人までもが、自らのプライバシーのヒントになる情報を公開している。そのおぞましさ、下品さを感じるのは私だけだろうか。そこには、ギリギリの情報を露出すれば、反応は一段と大きくなる、人気化するという誤解が存在しているように思える。

 いろんな問題をはらみながらも、ブログ文化が着実に浸透、育っているのは間違いない。それが社会のコミュニケーションをより多様化し、重層化していくことになればすばらしい。そのためには、リスク回避策や最低限のルールづくりが欠かせない。ブロガーの知恵の出しどころだ。


2007年7月3日号