COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2007.03.27

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第10号 最近の口実はセクハラや横領 『振り込め詐欺被害総額249億円/年』

 1月からATMで10万円以上の現金振り込みができなくなり、窓口においても本人確認書類の提示が義務づけられるようになった。
これはマネーロンダリング対策だが、一向になくならない振り込め詐欺事件対策でもある。
 
 警察庁の調べによると2006年(1〜12月)の被害総額は249億7800万円。04年284億円、05年252億円に比べ、わずかながら減少傾向になっている。

 とりわけ、今年1月の認知件数は906件で、昨年同期の1416件に比べて37%減。
被害金額も17億円が10億円にまで減った。「ATMの振込額が制限された結果」(社会部記者)とみられている。

 そうはいっても、まだまだ多くの人が泣かされている事実は変わらない。振り込め詐欺といってもその種類は、電話を使った詐欺から架空請求書などの手の込んだもの、さらに無防備な状態で放置されているインターネットを使ったものなどさまざまあるが、何といっても、いわゆるオレオレ詐欺による被害者が圧倒的に多い。

 被害者層をみると、50歳以上の女性がほとんどの割合を占める。
以前は交通事故や病気などを理由に、急いで振り込ませた手口が多かったが、最近はセクハラや不正な使い込みなど会社内でのトラブルを口実にしたものが激増している。

 私の友人も先日、この事件に巻き込まれそうになったのだが、幸いにも母親から確認の電話が入ったため、被害に遭わずに済んだ。

 これだけ騒がれているにもかかわらず、振り込め詐欺事件がなくならないのはなぜか。手口が巧妙化しているだけではない。すぐに相手を信じ込んでしまう、性善説にも誓い日本人の人の良さと、過保護としか思えない親子関係が背景にある。

 この4月、新入社員が多く入ってくる。その親の年代は50代が圧倒的に多い。こうしたトラブルに巻き込まれないよう、たまには子供の私生活をチェックするのも手だてではあるまいか。


2007年3月27日号


2007.03.20

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第9号 ゴルフ場を公共施設に 『ゴルフ場倒産件数54件/年』

 2000年前半に負債1000億を超える超大型倒産が相次いだゴルフ場だが、2006年の倒産件数は54件(帝国データバンク調べ)。1件あたりの負債総額も117億円と、どうやら津波のような倒産の時期が過ぎたようである。

 最近、景気の回復とともに不動産価格も上昇し、06年からゴルフ場の会員権相場が少しではあるが持ち直した。特に大都市近郊など立地条件の良いゴルフ場においては、会員権が急騰。土日の予約が取りにくいコースも出てきている。宮里藍、横峯さくらを筆頭に、女子プロのスターが登場し、いったん消えかけていたゴルフブームに再び灯がともった格好だ。

 とはいえ、ゴルフ場の売り上げには限りがある。1日50組、200人のプレーヤーを入れたとしても、1日当たりの売り上げはせいぜい300万円程度。このあり得ない数字を1年実現したところで10億円にしかならない。
06年のゴルフ場経営者の負債総額は6355億円にも上る。

 ちなみにわが国では、現在でも2000を超えるゴルフ場が運営されている。単純平均で、1都道府県あたり40コース。多少の人気回復だけでは、これだけのゴルフ場が生き残れるとは到底思えない。

 だったら、発想を根本的に変えたらどうか。筆者の持論だが、土地の高い島国日本にあって、広大な土地を占有するゴルフ場は本来なら公共施設として設置すべきである。
あるいは、巨額の利益を得た企業が社会還元策のひとつとして、スポーツ施設という名目のゴルフ場を設置、低料金で運営するというのが理想形である。

 高齢化社会に突入したいま、アメリカ並みの安いプレーフィ(2000円ぐらい)で高齢者を受け入れる。あるいは、ふだん自然と接触する機会の少なくなった子供たちに500円、600円でゴルフ場を開放する。
その上で、税制面でもゴフル場法人税の減税化等を図っていくといった発想ができないものか。


2007年3月20月号


2007.03.13

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第8号 学力低下の深刻 『日本の学習到達度数学6位 読解力14位』

 ここ数年、子供たちの学力低下が深刻化している。それが顕著にあらわれたのが、経済協力開発機構(OECD)が2003年に実施した、学習到達度調査の結果である。
41カ国の計27万6000人の15歳を対象にしたものだ。

 2000年調査では、8位だった読解力の順位が、平均以下の14位に低下。数学(応用力)は前回の1位から6位に転落した。この現状に文部科学省も「日本の学力は今や世界のトップレベルとはいえない」と発表している。

 ちなみに数学は香港のトップに続いて、2位フィンランド、3位韓国となり、読解力は1位がフィンランドで以下、韓国、カナダ、オーストラリアと続いている。

 この調査をみる限りにおいては、フィンランドと韓国は世界的にトップレベルの学力を持った学生を育てているといえる。読解力は文章や図表を理解して利用し、考える能力のテストのようだが、このテストに必要なのは、創造力と分析力であり、いかに現在の丸暗記授業が無意味かということを象徴することにもなる。

 同時に行ったアンケートで、数学の授業が楽しみか、内容に興味があるか、という質問項目のすべてにおいて、日本の生徒は平均以下の回答となっている。学問が日常的にどう必要となるかという視点の欠落した詰め込み授業の結果といえるのではないか。

 また、学校の授業以外の勉強時間もOECDの平均が週8.9時間であるのに対し、6.5時間と30%もダウンしている。
これらの結果から想像できるのは偏差値を重視した詰め込み型の授業が、生徒の学習意欲を低下させるだけでなく、自発性を奪い、さらに社会人になってからも知識の応用の利かない人材を輩出してしまうという現状にほかならない。

 今日の「美しい日本づくり」に必要な学習とは将来を予測したり、危険を察知したり、人の痛みを理解する、そんな感性を持った子供たちの育成ではなかろうか。


2007年3月13日号


2007.03.06

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第7号 ながら運転の危険性 『自転車死亡事故年間814人』

 安全だと思われている自転車の死亡事故が急増している。
全国の自転車による交通事故の発生件数は、昨年1年間で17万4262件と、10年間で1.25倍に。さらに、814人の死亡者が出ている。
負傷者は17万4641人(警察庁調べ)。
 
 日本の現在の自転車保有台数は、(財)自転車産業振興協会の調べによると8664万7000台である。つまり、一家に2台自転車があるという自転車大国でもある。

 最近の自転車による交通事故の増加には、どうも最近流行のパーソナルメディアが絡んでいると思えてならない。

 携帯電話や携帯音楽プレーヤーを聴きながら全速力で学校に向かう高校生、携帯電話をかけながら自転車で買い物に行く主婦、2人乗りでメールをうちながら走る中学生。
 こうした『・・・・・・・ながらメディア』の登場により、頭の中はいわゆる非現在な世界となり、赤信号が見えないだけでなく、車や歩行者に対する注意力が散漫になっているのは間違いない。
ましてやボリュームを最大限に上げて走るのだから「危ない」という声や、ダンプカーの大きなクラクションすらも聞こえないであろう。
 
 自転車はヘルメットもつけない生身の体で運転するだけに、事故で転倒した際に頭を強く打って死に至るケースが多い。
ニューヨークでは、ヘッドホン着用の自転車運転者にたいして、罰金1万円をとるという法令の施行が検討されつつある。

 関係業界の利権もさまざまに絡んでくると思われるが、警察庁は自転車運転時のパーソナルメディア利用を禁止する条例を定めるべきだろう。


2007年3月6日号