COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2007.02.27

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第6号 犯罪対策の新兵器 『ケータイ110番554万件』

 21世紀のIT社会、国際化社会を象徴するような新種の犯罪の増加傾向と比例するかのように、携帯電話での110番通報が激増している。警察庁によると、1997年に187万件だった携帯電話からの110番通報が、2005年には554万件と8年間で3倍に増加。昨年は600万件に近い数字になっているとみられる。

 その中で、措置が必要となった有効な通報は全体の75%。イタズラや間違いなどの非有効通報は25%。
さまざまな問題はあるが、携帯電話の通報が社会的に有力な「警報インフラ」となっていることは間違いない。

 交通事故の死者数が6352人(06年=警察庁交通局)と激減したのも、この携帯電話の通報によって、事故現場に早く救急車が駆けつけることができたからではあるまいか。

 その意味では、今後も防犯や事件解決のための有効利用が欠かせない。イジメ、振り込め詐欺、恐喝といった犯罪を減らすための携帯電話通報システムをどう構築するか。

 たとえば、「近所の子供が虐待されています」という情報が入った時に、いちばん問題なのは、通報後の当局の対応スピードだ。昨年は警官が現場に到着するまでに平均7分10秒かかった。97年の5分45秒に比べ1分半近く遅くなっている。この改善が緊急課題だ。

 そこでヒントになるのがニューヨークで話題になっている新システム。
NY市は、911番(日本の110番)のコールセンターが、携帯電話で撮影した映像を受信するシステムの導入を発表した。街角で犯罪を目撃したり危険な状況に遭遇した市民が、携帯電話で映像を送るという世界で始めての試みである。

 日本でも第3世代携帯を対象に通報場所を通信司令室に自動表示するシステムの導入が決まった。携帯110番システムのさらなる改善、有効利用が望まれる。


2007年2月27号


2007.02.20

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第5号 近視国家の到来 『中学生視力1.0未満5割超』

 子供たちの裸眼視力が年を追うごとに低下している。

 文部科学省の「学校保健統計調査速報」(平成18年度)によると、子供たちの裸眼視力の低下が著しい。特に幼稚園、小学校、中学校、肉体的に成長期を迎える4歳から15歳までの子供たちだ。

 平成8年度、裸眼視力が1.0未満の幼稚園児は21.4%だった。それが10年後の平成18年度には24.0%に増加している。小学生は25.8%が27.2%。中学生の場合は49.8%が50.1%。
近視の生徒が中学生全体の5割を超えてしまったのだ。

 高校生に至っては58.7%が裸眼視力1・0未満。
このままでは、メガネっ子ばかりの近視国家になってしまう。

 この問題についてはいろいろと要因があると思うが、テレビあるいはパソコン、携帯電話などの「発光体メディア」に対する学校と親、社会の無防備な姿勢が最大の原因ではなかろうか。
どのチャンネルを回しても同じようなタレントが登場し、瞬間的な笑いを取るだけのバラエティー番組があふれかえっている。
それを無批判に受け入れてしまう子供たち。いや、親も一緒か。

 一家に1台だったパソコンがパーソナルメディアと化し、子供部屋に1台ずつ置かれ、親の目を盗んでゲームや猥褻なインターネットに時間を割く子供たちも増えている。
電車の中ではケータイのメールチェックと携帯ゲーム機に夢中になる。

 こんな状況が毎日繰り返されているのだから、視力が低下するのは当然だ。子供たちの視力低下は、社会的な警鐘として受け止めなければならない。パソコンをはじめとしたITメディアの副作用に対する無関心を放置していたら、子供たちはますます危険な状況に追い込まれていく。


2007年2月20号


2007.02.06

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第4号 「癒やし」ペットブーム 『犬・猫2500万匹』

 懐かしの映画「名犬ラッシー」のリメーク、ペット住居OKのマンション、ペット連れ込み可のカフェレストラン・・・・・・。
空前のペットブームが続いている。一時期人気だったゴールデンレトリバーなどの大型犬だけでなく、最近映画ではやった豚まで、日本は世界有数のペット大国である。

 ペットフード工業会による犬猫飼育調査(2006年度)によると、家庭におけるペットの飼育率は、犬が19.2%、猫が14.7%。飼育頭数は犬が約1209万頭、猫が約1246万頭。2種類合わせると何と2500万頭近く。その8割以上が室内で飼われている。

 ペット関連市場の07年売り上げ予測は3842億円(富士経済調べ)で、このうちペットフードの売り上げは3000億円市場に届こうとしている。この数字は、急拡大しているインターネットの広告収入の規模を上回るものだ。

 このペットブームの背景に何があるのか。
ドッグ・アイテムのブランドショップ、株式会社デザインエフを経営している大谷香奈子氏に話を聞いたら、格差社会の影響で「寂しい日本人が増えているのよ。好きだから飼うっていう時代じゃないのよね。」と不思議がっていた。
実際、飼い主の飼育意向理由の調査の結果は、犬の場合「癒されそうだから」との答えは約6割に達している。猫好きの飼育理由も同様だ。

 現代は依存症の時代である。携帯電話に依存し、パソコンの情報に翻弄され、格差社会で過酷な競争を余儀なくされ、会社で学校でコミュニティーでいじめられ、疲れ切った体で帰宅して犬や猫の頭を撫でる。こうした日常の中で、私たちはどこで自分を取り戻すことができるのであろうか。
犬や猫を抱きかかえる事だけでは解決しないと思うのだが。


2007年2月6日号